ヨーロッパ運動と通貨問題
ヨーロッパ統合は,制度的には 1952 年に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立されたこ とにより始まる1)。しかし,筆者がこれまで明らかにしてきたように西欧各国政府による活 動以前に非政府組織による欧州統合運動が第二次大戦直後から開始されていた2)。統合運動 は政府に先立ってヨーロッパ統合を構想し,課題となる問題を議論し,政府間交渉の土台を 作った。 本稿の目的は,1940 年代末から 1950 年代初頭の欧州統合運動において問題となっていた 西欧通貨の交換性問題について,どのように考察されどのように扱われたのかを検討するこ とにある。その際,とくに本稿が注目する欧州統合運動は,これまで注...
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Veröffentlicht in: | Tōkyō Keidai Gakkai shi 2020-02 (305), p.79-101 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | ヨーロッパ統合は,制度的には 1952 年に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が設立されたこ とにより始まる1)。しかし,筆者がこれまで明らかにしてきたように西欧各国政府による活 動以前に非政府組織による欧州統合運動が第二次大戦直後から開始されていた2)。統合運動 は政府に先立ってヨーロッパ統合を構想し,課題となる問題を議論し,政府間交渉の土台を 作った。 本稿の目的は,1940 年代末から 1950 年代初頭の欧州統合運動において問題となっていた 西欧通貨の交換性問題について,どのように考察されどのように扱われたのかを検討するこ とにある。その際,とくに本稿が注目する欧州統合運動は,これまで注目されることが多か った連邦主義的運動ではなく,ヨーロッパの経済統合を主張した欧州経済協力連盟(ELEC: European League for Economic Co-operation)である。すなわち経済の専門家を中心とし た連盟の欧州統合構想がいかなるものであったのかを,1940 年代末の通貨問題をどのよう にとらえていたのかを分析することによって解明する。 また,本稿では上記の考察に先立って,ヨーロッパ横断的な非政府組織に注目することの 意味をヨーロッパ統合史研究の中で位置づけることも行う。この考察によって欧州経済協力 連盟において議論されていた通貨の交換性回復の問題がヨーロッパ統合において持つ意義に ついても明らかにしたい。 |
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ISSN: | 1348-6411 |