北海道の湿地における植物データベースの構築と保全優先湿地の選定
日本の残存湿地のうち、約86%は北海道に存在していることから、日本の湿地生態系やその生物多様性の保全には、北海道の湿地の現状や劣化状況の把握は必要不可欠である。しかしながら、北海道の湿地生態系において特に重要である植物の分布情報は、個別湿地での調査は存在するが、その集約はなされていない。そこで本研究では、北海道の湿地生態系を対象として、入手可能な湿地に関する文献を収集し、湿地に生育する植物の分布情報を集約し、データベースを構築した。また、構築したデータベースを用いて、湿地生態系における植物の生物多様性を評価し、保全を優先的に行う湿地を選定し、現行の保全対策との隔たりを評価した。データベースを構...
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Veröffentlicht in: | Hozen Seitaigaku Kenkyu = Japanese Journal of Conservation Ecology 2016, Vol.21(2), pp.125-134 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Schlagworte: | |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 日本の残存湿地のうち、約86%は北海道に存在していることから、日本の湿地生態系やその生物多様性の保全には、北海道の湿地の現状や劣化状況の把握は必要不可欠である。しかしながら、北海道の湿地生態系において特に重要である植物の分布情報は、個別湿地での調査は存在するが、その集約はなされていない。そこで本研究では、北海道の湿地生態系を対象として、入手可能な湿地に関する文献を収集し、湿地に生育する植物の分布情報を集約し、データベースを構築した。また、構築したデータベースを用いて、湿地生態系における植物の生物多様性を評価し、保全を優先的に行う湿地を選定し、現行の保全対策との隔たりを評価した。データベースを構築した結果、北海道の湿地生態系における植物の分布情報は、1990年代以降では155箇所の湿地のうち55箇所(約35%)にとどまり、時系列での評価が可能な湿地も32箇所(約21%)のみであることが明らかになった。このことは、湿地生態系の現状把握に必要不可欠な個別湿地での調査データが、北海道においても不足しており、より数多くの湿地でデータを蓄積することが最重要課題であることを示している。次に、構築したデータベースを用いて、ホットスポット解析(湿地植物の種数・RDB種数)と相補性解析により、3つの視点で生物多様性を評価し保全優先湿地を選定し、ラムサール条約や自然公園とのGap分析を行った。その結果、対象とした55箇所の湿地のうち、3種類(湿地植物の種数・RDB種数・相補性解析)の保全優先湿地が重複する湿地が9箇所選定されたが、他の指定とは重複しない相補性解析のみで選定された湿地は8箇所であった。この結果は、北海道の湿地生態系における植物の分布状況は一様ではなく、湿地の生物多様性保全には多くの湿地を守る必要があることが示唆された。また、保全優先湿地と選定された湿地28か所のうち、厳格に保護されている自然公園の特別保護地区に指定されているのは4箇所のみであり、保全対策を優先すべき湿地においても多くは保護されていない現状が明らかになった。 |
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ISSN: | 1342-4327 2424-1431 |
DOI: | 10.18960/hozen.21.2_125 |