ネフローゼ症候群の診断を契機に発見された門脈内血栓および左腎静脈内血栓の1例

今回我々はネフローゼ症候群の診断を契機に発見された門脈内血栓および左腎静脈内血栓の1例を経験したので文献的考察を含めて報告する.症例は60代女性.下肢浮腫と腹部膨満感を自覚し近医を受診したところ,高度蛋白尿を認めたため当院受診となった.血液生化学検査で低アルブミン血症,肝胆道系酵素の上昇,凝固検査でフィブリノーゲン,FDP,D-dimerの上昇を認めた.下肢浮腫の原因精査で施行した血管エコーで門脈内と左腎静脈内に血栓を認めた.CT検査でも同様の所見であった.ヘパリンとプレドニンを投与開始して経過観察を行った.第10病日に施行した血管エコーで血栓は縮小していた.門脈内血栓は背側に辺縁高エコー部分...

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Veröffentlicht in:Japanese journal of medical ultrasound technology 2018/02/01, Vol.43(1), pp.43-49
Hauptverfasser: 尾形, 裕里, 古川, 優貴, 寺園, 結貴, 大原, 未希子, 山本, 多美, 前田, るりこ, 松元, 香緒里, 富田, 文子, 堀端, 洋子, 西上, 和宏
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:今回我々はネフローゼ症候群の診断を契機に発見された門脈内血栓および左腎静脈内血栓の1例を経験したので文献的考察を含めて報告する.症例は60代女性.下肢浮腫と腹部膨満感を自覚し近医を受診したところ,高度蛋白尿を認めたため当院受診となった.血液生化学検査で低アルブミン血症,肝胆道系酵素の上昇,凝固検査でフィブリノーゲン,FDP,D-dimerの上昇を認めた.下肢浮腫の原因精査で施行した血管エコーで門脈内と左腎静脈内に血栓を認めた.CT検査でも同様の所見であった.ヘパリンとプレドニンを投与開始して経過観察を行った.第10病日に施行した血管エコーで血栓は縮小していた.門脈内血栓は背側に辺縁高エコー部分を認めたが,内部性状は変化なく均一であった.また,中枢端はわずかに揺れていた.左腎静脈内血栓は溶解が疑われる低エコー領域を認めた.第20病日の検査で門脈内血栓は上腸間膜静脈の一部に付着していただけで浮遊血栓となっていた.左腎静脈内血栓は腎静脈起始部から左卵巣静脈合流部を超えて索状に認めた.第27病日の検査で門脈内浮遊血栓に変化はみられなかった.左腎静脈内血栓は紐状に観察された.ネフローゼ症候群で腎静脈内血栓症の報告は多いものの,門脈内血栓などを伴った多発血栓の報告例はない.同疾患における血栓形成のメカニズムは複雑であり,検査を行う際には多発血栓の存在も念頭に置かなければならない.ネフローゼ症候群で浮腫の原因精査を行う際には,腹部血管の観察も行うなど広い範囲での検索が必要であることを経験した教訓的症例であった.
ISSN:1881-4506
1881-4514
DOI:10.11272/jss.43.43