カチオン性オリゴペプチドによる卵白アルブミンのナノ粒子化

タンパク質から成るナノ粒子は,生分解性を有し,低毒性で,再現性良く調製できるという利点をもつことから,ドラッグデリバリーのキャリアとして有用である.本研究では細胞膜透過性をもつカチオン性オリゴペプチドであるTATペプチドによるオボアルブミン(OVA)のナノ粒子化について検討した.OVAとTATペプチドの混合液を熱処理することでおよそ50–200 nmの粒子径をもつナノ粒子を作製することが可能であった.OVAとTATの混合比などの作製条件を変えることによりナノ粒子のサイズ制御が可能であった.また,TATとOVAの混合溶液のDSC測定およびCD測定より,共存するTATペプチドはOVAの熱変性温度や...

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Veröffentlicht in:Kōbunshi ronbunshū (Tokyo) 2017/07/25, Vol.74(4), pp.285-292
Hauptverfasser: 和久, 友則, 寺澤, 希実, 瀧本, 和彦, 市川, 将弘, 半田, 明弘, 田中, 直毅
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:タンパク質から成るナノ粒子は,生分解性を有し,低毒性で,再現性良く調製できるという利点をもつことから,ドラッグデリバリーのキャリアとして有用である.本研究では細胞膜透過性をもつカチオン性オリゴペプチドであるTATペプチドによるオボアルブミン(OVA)のナノ粒子化について検討した.OVAとTATペプチドの混合液を熱処理することでおよそ50–200 nmの粒子径をもつナノ粒子を作製することが可能であった.OVAとTATの混合比などの作製条件を変えることによりナノ粒子のサイズ制御が可能であった.また,TATとOVAの混合溶液のDSC測定およびCD測定より,共存するTATペプチドはOVAの熱変性温度や二次構造には影響を与えないことが示された.一方,偏光解消実験に基づく解析より両者は溶液中において確かに相互作用しており,解離定数は2.7 µMであることがわかった.また,変性状態のOVAとTATの混合溶液を加熱した場合にはナノ粒子が得られなかった.これらの結果より,ネイティブ状態のOVAがTATペプチドとイオンコンプレックスを形成した後,熱変性することによってナノ粒子を形成することが示唆された.さらに,OVA/TATナノ粒子はRAW264細胞に効率よく取り込まれることを示した.以上より,カチオン性ペプチド存在下でのOVAの熱処理によるナノ粒子形成は,タンパク質を基盤としたドラッグデリバリーキャリアーの作製法として有用であると期待される.
ISSN:0386-2186
1881-5685
DOI:10.1295/koron.2016-0069