胎生期内耳をターゲットとした遺伝性内耳疾患に対する 治療法開発の基礎研究

「要約」 遺伝性難聴患者においては, 高度感音難聴に加え末梢前庭障害によりめまいを繰り返し, 日常活動が障害されることが知られているが, これら難聴, めまいに対する根本治療は未だ存在しない. 考えうる治療法の一つとして遺伝子治療がある. われわれはこれまでにヒト遺伝性難聴モデルマウスに対して, 胎生期内耳である耳胞をターゲットとした正常遺伝の遺伝子導入による遺伝子治療の可能性について検討を行ってきた. GJB6遺伝子欠失マウス, SLC26A4遺伝子欠失マウスの胎生期11.5日の耳胞に対して, 正常遺伝子を注入後エレクトロポレーション法で耳胞周囲の細胞に遺伝子導入を行った. 生後1カ月時の評...

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Veröffentlicht in:Equilibrium Research 2017/12/31, Vol.76(6), pp.712-719
Hauptverfasser: 三輪, 徹, 竹田, 大樹, 蓑田, 涼生
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:「要約」 遺伝性難聴患者においては, 高度感音難聴に加え末梢前庭障害によりめまいを繰り返し, 日常活動が障害されることが知られているが, これら難聴, めまいに対する根本治療は未だ存在しない. 考えうる治療法の一つとして遺伝子治療がある. われわれはこれまでにヒト遺伝性難聴モデルマウスに対して, 胎生期内耳である耳胞をターゲットとした正常遺伝の遺伝子導入による遺伝子治療の可能性について検討を行ってきた. GJB6遺伝子欠失マウス, SLC26A4遺伝子欠失マウスの胎生期11.5日の耳胞に対して, 正常遺伝子を注入後エレクトロポレーション法で耳胞周囲の細胞に遺伝子導入を行った. 生後1カ月時の評価において, 各々のマウスの聴力を改善することに成功した. また, SLC6A4遺伝子欠失マウスにおいては, 聴力に加え前庭機能が改善することが確認できた. 一方, 出生後マウスに正常遺伝子補充を行った研究もいくつか存在し, 一部には治療が有効であったとする報告も存在するが, 一方では無効であったとする報告もあり, 一定した結果は得られていないのが現状である. これら出生後マウスに対する研究は, それぞれ異なった難聴原因遺伝子を対象とした研究であることから, 出生直後におけるこの治療効果の違いは, 原因遺伝子により内耳の不可逆的変化が起こる時期が異なることを示しているのかもしれない. マウスにおいては, 遺伝子によっては出生後においても正常遺伝子補充により治療可能かもしれないが, マウスとヒトにおける内耳の発達の違いを考えると, ヒトにおいて遺伝子補充治療が可能なのは胎生期のみである可能性が高いと考えられる. このことから, ヒト遺伝性難聴に対する正常遺伝子補充治療の実現のためには, より低侵襲な胎生期内耳への遺伝子導入方法の確立が必須である.
ISSN:0385-5716
1882-577X
DOI:10.3757/jser.76.712