重症心身障害者における骨粗鬆症の特徴と治療
重症心身障害者における骨脆弱性骨折は極めて重要な問題であり、施設内骨折の75%が原因不明であり明確な予防対策が困難であり苦慮する。非荷重、不動、関節拘縮、抗てんかん薬、栄養など骨代謝に不利な問題が数多く存在するが、明確な治療法は確立されていない。重要なことは骨密度測定(DXA装置による腰椎および大腿骨頚部:FN、大腿骨転子部:TH)をまず実施することで、そしてその数値に愕然とすることである。当センターは2011年にDXA装置を導入して以降、上記3部位の測定を4-6か月毎に継続して行っている。2年以上何らかの治療を行った重症心身障害骨粗鬆症患者49名(女26、男23)の初回DXA測定時の年齢は平...
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Veröffentlicht in: | 日本重症心身障害学会誌 2021, Vol.46(2), pp.212-212 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 重症心身障害者における骨脆弱性骨折は極めて重要な問題であり、施設内骨折の75%が原因不明であり明確な予防対策が困難であり苦慮する。非荷重、不動、関節拘縮、抗てんかん薬、栄養など骨代謝に不利な問題が数多く存在するが、明確な治療法は確立されていない。重要なことは骨密度測定(DXA装置による腰椎および大腿骨頚部:FN、大腿骨転子部:TH)をまず実施することで、そしてその数値に愕然とすることである。当センターは2011年にDXA装置を導入して以降、上記3部位の測定を4-6か月毎に継続して行っている。2年以上何らかの治療を行った重症心身障害骨粗鬆症患者49名(女26、男23)の初回DXA測定時の年齢は平均44.4(15-79)歳であったが、骨密度は腰椎67.8%、FN51.6%、TH41.6%と、腰椎より大腿骨近位で極度に低値であった。性別・年齢に関係なく、YAM70%未満が9割、YAM50%未満の重度骨粗鬆症が5割を占め、さらに30歳代でもYAM30%台がみられた。介護士がいくら注意しても骨折が起きてしまうことが理解される。また未治療の42例を平均3.5年経過観察すると、腰椎-1.0%/年、FN-1.4%/年、TH-1.3%/年とすべての部位で有意な低下を認めた。骨密度低下は腰椎74%、FN62%、TH68%の患者に認めた。つまり治療をしなければ若年例を含め7割の患者で経時的に年間1%低下し続ける、言わば待ったの切迫した状態であることを示している。血液生化学検査において、ビタミンD非充足が(抗てんかん薬の有無にかかわらず)全例に認められ、ほとんどは欠乏状態のため、ビタミンD補充は基本治療と考えられた。骨吸収亢進は半数に認められ、その場合骨吸収抑制薬が適切と考えられたが、骨折例および骨折複数回既往例には骨密度増加作用の強い、PTH製剤(フォルテオ®)を第一選択とし、効果不十分例で抗RANKL抗体(プラリア®60mg/6か月)を使用した。治療期間平均3.3年の時点で腰椎2.6%/年、FN・THともに1.6%/年と有意差な増加を認めた。薬剤の種類別では、ビスフォスフォネート(BP)では全部位で低下し、エルデカルシトール・抗RANKL抗体では全部位で増加し、PTHではFNは低下したが他の2部位で最大の増加を認めた。エルデカルシトールはビタミンD製剤の中で唯一椎体骨折の発生抑制効果が認められているため使用したが、高Ca血症の副作用が比較的多くみられた。1例を除き無症候ではあるものの、管理に大きなストレスとなり、安全性の面からアルファカルシドールを使用することが妥当と考えている。BPはGERD、口内炎、急性期反応、SERMは下肢深部静脈血栓塞栓症といった副作用のため重症心身障害者には安全とは言えない。また薬剤コストの点からPTH製剤は療養型病棟では使用できず、抗RANKL抗体、さらには最新最強の抗スクレロスチン抗体(イベニティ®)も使用困難であり、学会ならびに患者会からの働きかけが強く望まれる。完治が望めない重症心身障害者に我々医療者がうることは、苦痛を少しでも軽減させることに尽きる。その観点から骨折を予防することは大きな意味がある。我々は現在骨粗鬆症を治すほどの効果を持つ薬剤を手にしている。その薬剤を使用すべきか、副作用を生じても自分から訴えることができない重症心身障害患者においては躊躇するかもしれない。しかし我々の研究結果は限られた数であるが、BP以外の何らかの治療で骨密度が増加することが判明した。骨密度の増加が骨折発生抑制につながるかは、今後の研究が必要ではあるが、優れた薬剤により安全に一刻も早く治療し、データを蓄積すべきことに賛同いただけることを願っている。略歴氏名:星野, 弘太郎(ほしの こうたろう)1991年 鳥取大学医学部 卒業 1999年 鳥取大学大学院修了 医学博士号取得学位論文 J Bone Miner Metab 17(3):178-186,1999.1999年 第17回日本骨形態計測学会 学会賞受賞.2008年~ 西部島根医療福祉センターにて小児整形外科を専門的に従事2014年 脳性麻痺リハビリテーションガイドライン第2版策定委員会協力委員(骨粗鬆症に関する部門を担当)2015年~ 日本骨粗鬆症学会認定専門医 |
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ISSN: | 1343-1439 2433-7307 |
DOI: | 10.24635/jsmid.46.2_212 |