広範囲にわたる深部静脈血栓症を呈した血栓性素因のない重症心身障害者

重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は、下肢麻痺や呼吸不全など深部静脈血栓症(deep vein thrombosis;DVT)を発症するリスクを多く有している。今回われわれは、突然の左下肢腫脹と広範囲な深部静脈血栓を認めた症例を経験した。症例は43歳女性。X-3日に気管支炎を認め抗菌薬投与を行った。X日に左下肢全体の腫脹が出現し、蜂窩織炎を疑い、抗菌薬治療を継続した。しかし、左下肢腫脹は改善せず、X+3日に下肢静脈エコー検査で左総腸骨静脈からヒラメ筋静脈に及ぶ広範囲な血栓を認めDVTと診断した。選択的Ⅹa因子阻害剤の内服を開始し、左下肢腫脹は軽減し、血栓は消退傾向となった。重症児(者)...

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Veröffentlicht in:日本重症心身障害学会誌 2018, Vol.43(3), pp.501-506
Hauptverfasser: 越野, 恵理, 奥村, 亜希子, 髙﨑, 麻美, 滝澤, 昇, 三浦, 正義
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))は、下肢麻痺や呼吸不全など深部静脈血栓症(deep vein thrombosis;DVT)を発症するリスクを多く有している。今回われわれは、突然の左下肢腫脹と広範囲な深部静脈血栓を認めた症例を経験した。症例は43歳女性。X-3日に気管支炎を認め抗菌薬投与を行った。X日に左下肢全体の腫脹が出現し、蜂窩織炎を疑い、抗菌薬治療を継続した。しかし、左下肢腫脹は改善せず、X+3日に下肢静脈エコー検査で左総腸骨静脈からヒラメ筋静脈に及ぶ広範囲な血栓を認めDVTと診断した。選択的Ⅹa因子阻害剤の内服を開始し、左下肢腫脹は軽減し、血栓は消退傾向となった。重症児(者)は、DVTのリスクを多く有しているにもかかわらず、報告例のほとんどは無症状で偶発的に発見されたものであった。下肢の腫脹に対してDVTを鑑別に挙げ、積極的に下肢静脈エコー検査を行うことが重要と考えられる。また、今回使用した選択的Ⅹa因子阻害剤は頻回の採血による用量調整が不要で、出血等の副作用を伴わずに血栓の縮小を得た。
ISSN:1343-1439
2433-7307
DOI:10.24635/jsmid.43.3_501