遷延性の重度意識障害を呈する超重症児の理解と支援
超重症児と呼ばれる子どもたちが重症心身障害児施設や病院で増加していると言われる。周知のように超重症児とは、「長期に継続する濃厚な医療的ケアを必要とする子どもたち」である、具体的には「人工呼吸器や気管切開、吸引や酸素療法などの呼吸管理や中心静脈栄養法などを継続して必要とし、それが常態である子どもたち」であり、運動発達上は寝たきりから座位まで、超重症児スコア25点以上の子どもを指す(鈴木,1996)。この超重症児に該当する児童生徒は、特別支援学校の通学生のみならず施設・病院・家庭で教育を受けている子どもたちの中にも増加している。 このような動向を踏まえ、長く重症心身障害児(者)の医療に携わってこら...
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Veröffentlicht in: | 日本重症心身障害学会誌 2017, Vol.42(2), pp.130-130 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 超重症児と呼ばれる子どもたちが重症心身障害児施設や病院で増加していると言われる。周知のように超重症児とは、「長期に継続する濃厚な医療的ケアを必要とする子どもたち」である、具体的には「人工呼吸器や気管切開、吸引や酸素療法などの呼吸管理や中心静脈栄養法などを継続して必要とし、それが常態である子どもたち」であり、運動発達上は寝たきりから座位まで、超重症児スコア25点以上の子どもを指す(鈴木,1996)。この超重症児に該当する児童生徒は、特別支援学校の通学生のみならず施設・病院・家庭で教育を受けている子どもたちの中にも増加している。 このような動向を踏まえ、長く重症心身障害児(者)の医療に携わってこられた大村氏は、超重症児を判定するスコアは「あくまでも医療的ケアの必要度を示すものであり、必ずしも脳障害の重症度と並行するものではない。すなわち、超重症児のなかにも、何らかの手段でわれわれとコミュニケーションが可能な児から、われわれの働きかけに関してまったく何の反応もみられない児まで存在する。」(大村,2004)として、超重症児をその脳機能障害の程度から4段階に区分し、昏睡ないし半昏睡状態を最重度としている。大村氏はこの最重度に該当する事例を紹介し長期間の療育によっても精神運動面の発達はまったく見られない、したがって「このような状態にある人間に何らかの働きかけを行い、何らかの反応を期待すること自体が間違っている、そっと眠っていてもらうのが一番よいのかもしれない」と考える一方、反応表出は観察されなくとも「この児なりの内的世界が存在する可能性はないのだろうか」と自問している。そして、このような超重症児のQOLを高めるためにすべきことは、①確かな医療を行い、生命を保証することの他に、「②誰も知りえないこの児の内的世界が存在するとして、健常児に対するのと同様に話しかけたり、抱っこしてあげること。しかし、その児が何か反応を示してくれることは期待しないこと。どうしても反応を期待するならば、もしこの児が反応を示すとすれば、それはいかなるものであるかを観察し見つけ出す努力をすること」と超重症児の療育に携わる方々に対しやや挑発的な言葉を向けている。演者は大村氏の自問する内容に共感するととともに、教育の立場から、この子どもたちを理解し支援方略を見出す取り組みを継続してきた。 さて、上記のQOLを「生命の質」と捉えた場合、それが向上するとは具体的には何を指すのか、あるいは、どのようなエビデンスを踏まえたらよいのだろうか。また、健常児に対するのと同様の働きかけだけで答えは見つかるのだろうかとも思う。しかしそのためにはまず、以下の問いへの答えを探ることが必要であろう。①この子らは、いかなる内的世界(精神世界)にいるのか、あるいは、周囲の世界との関係でどのような生命活動を営んでいるのか(糸口が極端に狭く、その世界は容易には見えてこないかもしれない)。②活動の時間・空間が大きく制約されているが、どのような条件であれば、どのような活動が可能となるのか。③この子らとわれわれはどのようにすれば交流できるのか。このような疑問に対し、心理学的理解と教育的・療育的支援方略を開発していきたい。このために、(1)働きかけに対する反応(運動反応、生理的反応)の様態から、一人ひとりの子どもが受け止めやすい感覚刺激や働きかけを明らかにする、(2)子どもの自発的な微小運動が増大するような応答環境を整えていく。そして、このことを通して先の問への答えを探していくことを療育・教育の目標としたい。 このセッションでは、子どもの運動・感覚制限を踏まえ、また、わずかな糸口を見出しながら長期間にわたって行った演者らの実践的取り組みを紹介するとともに、この間に見出されたことから今後の療育・教育に向けての提案を行いたい。略歴1978年4月 東北大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。1978年5月~2002年3月 国立特殊教育総合研究所重複障害教育研究部研究員・主任研究官・研究室長歴任。1992年3月~8月 文部省在学研究員としてノルウェー特殊教育研究所および英国バーミンガム大学学校教育学部に滞在。1998年2月 東北大学より博士(教育学)の学位を取得。2002年4月~2016年3月 東北大学大学院教育学研究科教授。2016年4月~現在 東北福祉大学教育学部教授。著書「生命活動の脆弱な重度・重複障害児への教育的対応に関する実践的研究」(風間書房,1999) |
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ISSN: | 1343-1439 2433-7307 |
DOI: | 10.24635/jsmid.42.2_130 |