O-2-A07 膀胱がんと肝がんに罹患した重症心身障害者の男性例

はじめに重症児者の高齢化に伴い、がん発生、がん治療の問題は避けて通れない問題となっている。重症児者では原疾患や合併症によってがん治療の制限・変更をせざるを得ないことも見受けられ、本人・家族の意思を尊重しつつ治療を行うことが求められる。今回、膀胱がん治療12年後に肝がんが判明した一症例を報告する。症例47歳男性。核黄疸後遺症によるアテトーゼ型脳性麻痺のため4歳4カ月時から当院に入院中。筋緊張が強い。背這いで移動する。言語によるコミュニケーションは可能で、コンピュータを用いて文章を書いたりメールをしたりする。35歳時に膀胱がんに罹患。本人に手術の必要性を説明後、「手術を早くしてほしい。気になって食...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:日本重症心身障害学会誌 2014, Vol.39(2), pp.256-256
Hauptverfasser: 植村, 篤実, 平松, 美佐子, 後藤, 千佳, 今井, 一秀, 後藤, 一也, 佐古田, 利文
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:はじめに重症児者の高齢化に伴い、がん発生、がん治療の問題は避けて通れない問題となっている。重症児者では原疾患や合併症によってがん治療の制限・変更をせざるを得ないことも見受けられ、本人・家族の意思を尊重しつつ治療を行うことが求められる。今回、膀胱がん治療12年後に肝がんが判明した一症例を報告する。症例47歳男性。核黄疸後遺症によるアテトーゼ型脳性麻痺のため4歳4カ月時から当院に入院中。筋緊張が強い。背這いで移動する。言語によるコミュニケーションは可能で、コンピュータを用いて文章を書いたりメールをしたりする。35歳時に膀胱がんに罹患。本人に手術の必要性を説明後、「手術を早くしてほしい。気になって食べれない。」との発言があった。当院に泌尿器科医師を招聘し、全麻下開腹にて腫瘍を切除した。その後は主治医によりBCG膀胱内注入療法を行った。現在まで年1回CT、年3回尿細胞診で再発のないことを確認している。47歳時にCTで肝内腫瘤を認めた。CEA 9.3 ng/ml、 CA19-9 166.5 U/ml、 PIVKA-II 4575 mAU/mlと高値であった。本人には「肝臓にしこりがある」と伝え、専門医に対診した。膀胱がんの転移ではなく肝内原発がん(肝細胞がんと管内胆管がんの混合)であるとのことであった。本人は「(主治医)から話を聞いて少し気持ちが楽になった。手術は僕の体やけんお願いします。」と文章を綴っており、手術・化学療法・放射線療法の適応の有無と治療の場所(当院か、転院するか)について、医学的観点と本人・家族の意思を統合して治療をする予定である。まとめ意思が明確な患者に対し、病状について専門医の見解を本人が理解できるように伝えて意思決定の助けとすることの重要さと困難さに直面した一例を経験した。患者がその場で意思を表明することが難しくても文章にしてもらうことで患者の考えを明確にすることができた。
ISSN:1343-1439
2433-7307
DOI:10.24635/jsmid.39.2_256_1