人工ヘムタンパク質モデル錯体による血中内在性一酸化炭素の除去によって惹起される生体内反応
「和文抄録」一酸化炭素 (CO) は一般的に有毒ガスとして認知されるが, 生体内では余剰のヘムが代謝分解される際に副産物として発生し, 体内には恒常的にCOが存在する. このような内在性COは, ガス状シグナル物質として生理機能を示すと考えられるが, その機能の全容は明らかではない. 我々はシクロデキストリン二量体とポルフィリン鉄 (II) 錯体からなる人工ヘモグロビン錯体 "hemoCD" が動物体内において内在性COを選択的に除去することを見出し, このhemoCDの特性を利用して内在性COの生理機能にアプローチすることを試みた. 腹腔にhemoCD水溶液を投与されたマ...
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Veröffentlicht in: | 人工血液 2019-11, Vol.27 (1), p.44-52 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「和文抄録」一酸化炭素 (CO) は一般的に有毒ガスとして認知されるが, 生体内では余剰のヘムが代謝分解される際に副産物として発生し, 体内には恒常的にCOが存在する. このような内在性COは, ガス状シグナル物質として生理機能を示すと考えられるが, その機能の全容は明らかではない. 我々はシクロデキストリン二量体とポルフィリン鉄 (II) 錯体からなる人工ヘモグロビン錯体 "hemoCD" が動物体内において内在性COを選択的に除去することを見出し, このhemoCDの特性を利用して内在性COの生理機能にアプローチすることを試みた. 腹腔にhemoCD水溶液を投与されたマウス体内では, 血中のカルボキシヘモグロビン (COHb) 量が一時的に著しく減少し, その後にすみやかに定常値へと回復していった. これはhemoCDが血中の内因性CO-HbからCOを除去したことを示すだけでなく, 一旦減少したCOがフィードバック機構により補償されるメカニズムが存在することを示す結果となった. 次にhemoCDによって内在性COを除去したマウス肝臓内における時計遺伝子の発現量について調査した. その結果, COの除去により肝臓内の概日リズムが大きく乱されることが判明した. 時計遺伝子の発現にはCO応答性を有する転写因子であるNPAS2およびCLOCKが関与するため, これらの転写因子の機能変化が時計システムに変化をもたらしたものと考えられる. さらに内在性CO除去によって誘発される炎症反応も時計遺伝子の発現を乱す一因となっていた. hemoCDは内在性CO定量試薬として利用することもできるため, 培養細胞内に含まれる内在性COの定量方法についても記載した. |
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ISSN: | 1341-1594 |