食道裂孔ヘルニアの治療により改善傾向がみられた口腔異常感症の1例

要旨: 症例は67歳, 女性. 舌の疼痛および特定の食物しか食べられないとする極度の偏食を主訴として紹介来院した. 現病歴は, 6年前から舌の違和感を自覚しさまざまな医療機関を受診し精査したが異常所見なしとされ, 加療後も自覚症状の改善はみられなかった. 口腔内所見は, 舌全体に疼痛およびしびれ感があるが器質的変化は認められなかった. 処置及び経過は, 舌の細菌・真菌検査によりCndida albicans(C. albicans)陽性が得られ抗真菌薬処方したところ舌症状の改善傾向を示した. しかしその後も嘔気や食欲の減退, 特定の食物以外は食べることができないという極度の偏食などの胃腸症状が...

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Veröffentlicht in:明海歯科医学 2021-03, Vol.50 (1), p.54-58
Hauptverfasser: 森一将, 松本安吏, 藤原敬子, 内田洋子, 並木一郎, 長谷川彰彦, 嶋田淳, 山本信治
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Zusammenfassung:要旨: 症例は67歳, 女性. 舌の疼痛および特定の食物しか食べられないとする極度の偏食を主訴として紹介来院した. 現病歴は, 6年前から舌の違和感を自覚しさまざまな医療機関を受診し精査したが異常所見なしとされ, 加療後も自覚症状の改善はみられなかった. 口腔内所見は, 舌全体に疼痛およびしびれ感があるが器質的変化は認められなかった. 処置及び経過は, 舌の細菌・真菌検査によりCndida albicans(C. albicans)陽性が得られ抗真菌薬処方したところ舌症状の改善傾向を示した. しかしその後も嘔気や食欲の減退, 特定の食物以外は食べることができないという極度の偏食などの胃腸症状が続き, 改善傾向を示していた舌も疼痛やしびれが再び増悪した. 内科で上部消化器内視鏡精査の結果, 食道裂孔ヘルニアおよび胃ポリープの診断を得た. 内科にてプロトンポンプ阻害薬や漢方薬などによる薬物療法を施行したところ胃腸症状の改善とともに口腔内症状の消失, 食事内容も改善され, 現在も経過観察中である. 食道裂孔ヘルニアは食道胃接合部が横隔膜を超え縦隔内に偏位した状態とされる滑脱型ヘルニアが多く, 加齢や肥満により発症頻度が増すとされている. その所見が高度になると, 胸焼け, 胸部痛, 胃内容物逆流, それに伴う逆流性食道炎といった臨床症状を訴える. 本症例は食道裂孔ヘルニアの増悪に伴い口腔内症状や過度の偏食を発症したのではないかと考えている.
ISSN:1881-4298