4基本味のスクリーニング検査法を応用した味覚機能評価の有用性

「要旨」 : 味覚機能の的確な評価は, ヒトのQOLや健康を維持する上で重要である. 豊田らは, 全口腔法とvisual analogue scale (以下, VAS) を併用し, 20 歳代の健常有歯顎者が認知し得る最低濃度を各基本味ごとに1種類選定することにより, 一味質につき1種類のみの検査液を応用した, 4基本味における味覚機能スクリーニング検査法 (以下, 味覚スクリーニング法) を開発した. しかし, この味覚スクリーニング法を応用して味覚機能を評価したのは20歳代のみであり, その他の年代に対して行った報告は見当たらない. 本研究の目的は, 20歳代から70歳代までの健常有歯顎...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:明海歯科医学 2019-09, Vol.48 (2), p.27-34
Hauptverfasser: 染川正多, 鳴海史子, 松川高明, 濱坂弘毅, 松本大慶, 曽根峰世, 岡本和彦, 大川周治
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:「要旨」 : 味覚機能の的確な評価は, ヒトのQOLや健康を維持する上で重要である. 豊田らは, 全口腔法とvisual analogue scale (以下, VAS) を併用し, 20 歳代の健常有歯顎者が認知し得る最低濃度を各基本味ごとに1種類選定することにより, 一味質につき1種類のみの検査液を応用した, 4基本味における味覚機能スクリーニング検査法 (以下, 味覚スクリーニング法) を開発した. しかし, この味覚スクリーニング法を応用して味覚機能を評価したのは20歳代のみであり, その他の年代に対して行った報告は見当たらない. 本研究の目的は, 20歳代から70歳代までの健常有歯顎者を対象に, 味覚スクリーニング法を応用して味覚機能を評価し, 本法の有用性を明らかにすることである. 被験者は, 全身疾患を認めずかつ顎口腔系に異常を認めない20歳代から70歳代までの健常有歯顎者101名とした. 味覚機能検査の試薬 (以下, 味溶液) として, スクロース (甘味 : 7.5x10-2M) , 塩化ナトリウム (塩味 : 2.0x10-1M) , クエン酸 (酸味 : 2.0x10-3M) , 塩酸キニーネ (苦味 : 7.5x10-5M) を使用した. 味覚機能検査には全口腔法を用い, 感じた味の強さに関してはVAS法によりスコア化した (以下, 味覚VAS値) . 味覚VAS値については一元配置分散分析, 多重比較にはDunnettの統計解析を行い, 危険率が5%未満の場合に有意差が存在するとした. その結果, 苦味はすべての年代で正常と判定された. 甘味は20歳代以外のすべての年代で全被験者が正常と判定された. 20歳代の甘味の検知では, 被験者の7.4%に錯味覚もしくは味覚減退が認められた. 20歳代の塩味の検知では3.7%, 20歳代の酸味の検知では7.4%に錯味覚もしくは味覚減退が認められた. 塩味は60歳代で, 酸味は50歳代で全被験者が正常と判定されたが, 他の年代では塩味と酸味のいずれも錯味覚もしくは味覚減退が認められるとともに, 加齢により味覚異常が増加する傾向を認めた. その結果, 以下の結論を得た. 1. 甘味と苦味に関しては, 本法は加齢の影響を受けにくく, スクリーニング検査として有用な味質であることが示された. 2. 酸味と塩味に関しては, 本法は加齢の影響が認められ, スクリーニング検査に用いる味質としては検出感度が低いことが示された.
ISSN:1881-4298