ヒト幹細胞グライコーム:構造解明から社会実装まで

高密度レクチンマイクロアレイや質量分析を用いてヒト多能性幹細胞に発現する糖鎖構造を精密分析した。その結果、ヒト多能性幹細胞では分化した体細胞と比べてα2-6Sia、α1-2Fuc、1型ラクトサミン構造が増加していることがわかった。劇的な変化がN型糖鎖上のシアル酸に見出され、ヒトiPS細胞では全てα2-6型であるのに対し、ヒト線維芽細胞では全てα2-3型であった。次に間葉系幹細胞や軟骨前駆細胞の糖鎖構造を調べると、分化する能力が高い細胞ではα2-6シアリルN型糖鎖の割合が高いことがわかった。さらに、ヒト多能性幹細胞を特徴づける新たな細胞表面マーカーとしてHタイプ3(Fucα1-2Galβ1-3G...

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Veröffentlicht in:Trends in Glycoscience and Glycotechnology 2019/07/25, Vol.31(181), pp.SJ83-SJ84
1. Verfasser: 舘野, 浩章
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:高密度レクチンマイクロアレイや質量分析を用いてヒト多能性幹細胞に発現する糖鎖構造を精密分析した。その結果、ヒト多能性幹細胞では分化した体細胞と比べてα2-6Sia、α1-2Fuc、1型ラクトサミン構造が増加していることがわかった。劇的な変化がN型糖鎖上のシアル酸に見出され、ヒトiPS細胞では全てα2-6型であるのに対し、ヒト線維芽細胞では全てα2-3型であった。次に間葉系幹細胞や軟骨前駆細胞の糖鎖構造を調べると、分化する能力が高い細胞ではα2-6シアリルN型糖鎖の割合が高いことがわかった。さらに、ヒト多能性幹細胞を特徴づける新たな細胞表面マーカーとしてHタイプ3(Fucα1-2Galβ1-3GalNAc)を見出した。この糖鎖エピトープは1型膜タンパク質であるポドカリキシン上に発現していた。さらにこの構造を特異的に認識するプローブとしてrBC2LCNという組換えレクチンを発見した。そこでrBC2LCNを利用することにより、ヒト多能性幹細胞の造腫瘍性のリスクを克服するための3つの技術を開発した。すなわち、ヒト多能性幹細胞を生きたまま染色する技術、培養液を用いてヒト多能性幹細胞の細胞数をモニタリングする技術、ヒト多能性幹細胞を除く技術である。本ミニレビューではヒト多能性幹細胞に発現する糖鎖の構造解明から社会実装までの我々の研究成果を概説する。
ISSN:0915-7352
1883-2113
DOI:10.4052/tigg.1939.2SJ