潜在性結核感染症治療指針
「要旨」:結核に感染して発病するリスクが高い者に対する潜在性結核感染症(LTBI)の治療を行うことの有効性は確立しており, わが国においても結核の根絶を目指すために重要な戦略になると考えられる. 近年, インターフェロン-γ遊離試験(IGRA)が広く使われるようになったこと, HIV感染者に対するイソニアジド(INH)による発病予防治療が世界的に勧奨されるようになっていること, 免疫性疾患等の治療に用いられる生物学的製剤の種類も適応疾患も増大していることなどを鑑みて, 日本結核病学会予防委員会と治療委員会は合同で本指針を作成することとした. LTBI治療対象の決定に際しては, (1)感染・発病...
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Veröffentlicht in: | 結核 2013-05, Vol.88 (5), p.497-512 |
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1. Verfasser: | |
Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 「要旨」:結核に感染して発病するリスクが高い者に対する潜在性結核感染症(LTBI)の治療を行うことの有効性は確立しており, わが国においても結核の根絶を目指すために重要な戦略になると考えられる. 近年, インターフェロン-γ遊離試験(IGRA)が広く使われるようになったこと, HIV感染者に対するイソニアジド(INH)による発病予防治療が世界的に勧奨されるようになっていること, 免疫性疾患等の治療に用いられる生物学的製剤の種類も適応疾患も増大していることなどを鑑みて, 日本結核病学会予防委員会と治療委員会は合同で本指針を作成することとした. LTBI治療対象の決定に際しては, (1)感染・発病のリスク, (2)感染の診断, (3)胸部画像診断, (4)発病した場合の影響, (5)副作用出現の可能性, (6)治療完了の見込み, について検討が必要である. 積極的にLTBI治療を検討するのは, HIV/AIDS, 臓器移植(免疫抑制剤使用), 珪肺, 慢性腎不全/透析, 最近の結核感染(2年以内), 胸部X線画像で線維結節影(未治療の陳旧性結核), 生物学的製剤の使用, 多量の副腎皮質ステロイドなど, 相対危険度が4以上と考えられる状態である. それよりはリスクは低いが, 複数の発病リスクが重複した場合にLTBI治療の検討が必要なのは, 経口および吸入副腎皮質ステロイド剤の使用, その他の免疫抑制剤の使用, 糖尿病, 低体重, 喫煙, 胃切除等である. 治療薬剤と期間は原則としてINHを6カ月または9カ月内服であり, INHが使用できない場合はリファンピシン(RFP)を4カ月または6カ月投与する. 免役抑制状態にある者であっても, 感染リスクが著しく高いとは考えられないわが国において, 長期に及ぶLTBI治療を支持する理由はないものと考えられる. 肝障害の既往がある者, 妊婦, HIV陽性者, アルコール多飲者については, 治療開始時, 有症状時および定期的な肝機能検査が必要である. LTBI治療中の発病の報告も見られており, 結核発病の症状に注意を払うべきである. LTBI治療に際しては, 患者に対して副作用および発病の危険, および薬の中断の危険について健康教育が必要であり, 保健所と連携して治療継続のための支援と治療成績の評価をする. 感染症法の規定によって保健所への患者発生の届出が義務付けられており, 保健所はそれに基づく登録, 訪問指導, 服薬支援を行うことになっている. 結核指定医療機関における医療は保健所に公費負担申請を行い, 感染症診査協議会の審査を経て承認されれば自己負担額が低減される. |
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ISSN: | 0022-9776 |