透析例の重症虚血肢に対するバイパス手術—日本の現状と近年の進歩

透析人口の増加に伴い,我が国における重症下肢虚血例の半数以上が透析患者となっている.透析患者は一般に短命であるが,よく管理された透析例は生存率が比較的高く,日本の透析患者は米国の透析患者の数倍長生きできるとされている.そのため,一部ではあっても,透析例の中で,バイパス術の恩恵を長期にわたって享受できる患者が存在しており,そうした患者をいかに的確に選択するかが重要である.その場合,動脈病変の解剖学的要因よりも,患者の全身状態や栄養状態および使用可能な静脈材料の有無が重要となる.近年の進歩としてまず挙げられるのは,超音波ガイド下神経ブロック麻酔によるバイパス術であり,ハイリスク症例の麻酔侵襲を低減...

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Veröffentlicht in:日本血管外科学会雑誌 2017/02/10, Vol.26(1), pp.33-39
Hauptverfasser: 東, 信良, 菊地, 信介, 奥田, 紘子, 三宅, 啓介, 古屋, 敦宏
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:透析人口の増加に伴い,我が国における重症下肢虚血例の半数以上が透析患者となっている.透析患者は一般に短命であるが,よく管理された透析例は生存率が比較的高く,日本の透析患者は米国の透析患者の数倍長生きできるとされている.そのため,一部ではあっても,透析例の中で,バイパス術の恩恵を長期にわたって享受できる患者が存在しており,そうした患者をいかに的確に選択するかが重要である.その場合,動脈病変の解剖学的要因よりも,患者の全身状態や栄養状態および使用可能な静脈材料の有無が重要となる.近年の進歩としてまず挙げられるのは,超音波ガイド下神経ブロック麻酔によるバイパス術であり,ハイリスク症例の麻酔侵襲を低減する上で貢献している.超音波検査機器も進化して診断能が向上し,高度虚血例であっても開存している足部動脈を描出して適確に末梢吻合部動脈を選択する一助となっている.石灰化動脈への吻合法も進歩し,さらに,バイパス術後の潰瘍治療も進歩した.広範囲組織欠損症例では骨髄炎などの深部感染症がしばしば問題となるが,それを的確に診断し,対処することにより,大切断を回避することに役立ってきた.血管内治療も進歩している中で,どのような透析患者がバイパス手術に適しているのか適確な患者選択を示す臨床研究成果の集積が待たれる.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.16-00086