死の直前にわだかまりが融けた悪性腫瘍患者の心理過程

「要旨」本研究の目的は, 死の直前にわだかまりが融けた悪性腫瘍患者の心理過程を明らかにすることである. 方法は, 診療・看護記録から患者の属性等を収集した. また, 入院期間中に看護記録に記載されていた患者の感情や行動を抽出した. 患者にかかわった看護師間の会話もデータとし質的帰納的に分析した. 倫理的配慮は, 診療科長, 看護師長等に研究の承諾を得た後, 患者のキーパーソンに同意を得た, 患者は男性2名であった. A氏は, 50歳後半で菌状息肉症, B氏は, 60歳前半で肺癌であった. 入院日から死までの期間は, A氏38日, B氏44日であった. 死の直前にわだかまりが融けた悪性腫瘍患者の...

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Veröffentlicht in:香川大学看護学雑誌 2015-03, Vol.19 (1), p.53-67
Hauptverfasser: 西村美穂, 大森美津子, 政岡敦子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「要旨」本研究の目的は, 死の直前にわだかまりが融けた悪性腫瘍患者の心理過程を明らかにすることである. 方法は, 診療・看護記録から患者の属性等を収集した. また, 入院期間中に看護記録に記載されていた患者の感情や行動を抽出した. 患者にかかわった看護師間の会話もデータとし質的帰納的に分析した. 倫理的配慮は, 診療科長, 看護師長等に研究の承諾を得た後, 患者のキーパーソンに同意を得た, 患者は男性2名であった. A氏は, 50歳後半で菌状息肉症, B氏は, 60歳前半で肺癌であった. 入院日から死までの期間は, A氏38日, B氏44日であった. 死の直前にわだかまりが融けた悪性腫瘍患者の心理は, わだかまりが融ける前に, 「思い描く理想の死への道を進みたい」,「この瞬間を自分らしく生きたい」,「復活への希望」,「今までの自分では生きられない恐怖」がほぼ同時に存在していた. そして, 「今までの自分では生きられない恐怖」が回避できなくなった時, 「自己の歪みを認める」,「素直な感情を表出する」,「愛し愛されていることを感じる」ことができ, 「わだかまりが融ける」,「命あるかぎり自分の人生を生きる」という心理をたどっていた. 今までの自分では生きられない恐怖が回避できなくなった時, 自己の歪みを認める, 素直な感情を表出する, 愛し愛されていることを感じるといった患者の心理に変化が生じている. "恐怖" はネガティブな感情として取り扱われることがあるが, 否定的なものに立ち向かう傾向をもつ. そのため, 自己の歪みと向きあうことができたと考えられる. そして, 歪みを認められたことで, 素直な感情を表出したり, 愛していることや愛されていることを感じられるようになり, わだかまりが融けたと考えられる. 死の直前にわだかまりが融けた悪性腫瘍患者は, 「今までの自分では生きられない恐怖」が要となり, わだかまりが融ける体験ができていた.
ISSN:1349-8673