性暴力・暴力被害女性への看護に関する実態調査

「要旨」目的 : 日本における性暴力・暴力被害女性への看護・医療の実態を看護者の視点から明らかにする. さらに, 被害女性を看護する際の困難性に関する分析を行うことを目的にした. 方法 : 本調査は, 便宜的に抽出した関東10ヶ所の病院に勤務する女性の看護者1528名に対し, 自記式の質問紙を用いて横断調査を行った. 調査期間は, 1998年12月から1999年4月であった. 調査内容は, どのような性暴力・暴力被害女性への看護の経験があるか, 初めて性暴力・暴力被害者をケアしたときの状況, 実施した看護ケア, 看護者の体験についての質問を設定した. 結果 : 1005名から回答が得られた (...

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Veröffentlicht in:聖路加看護学会誌 2004-06, Vol.8 (1), p.1-10
Hauptverfasser: 片岡弥恵子, 下谷惠美, 加納尚美, 大竹眞裕美
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「要旨」目的 : 日本における性暴力・暴力被害女性への看護・医療の実態を看護者の視点から明らかにする. さらに, 被害女性を看護する際の困難性に関する分析を行うことを目的にした. 方法 : 本調査は, 便宜的に抽出した関東10ヶ所の病院に勤務する女性の看護者1528名に対し, 自記式の質問紙を用いて横断調査を行った. 調査期間は, 1998年12月から1999年4月であった. 調査内容は, どのような性暴力・暴力被害女性への看護の経験があるか, 初めて性暴力・暴力被害者をケアしたときの状況, 実施した看護ケア, 看護者の体験についての質問を設定した. 結果 : 1005名から回答が得られた (有効回収率66.0%). 202名 (20.1%) の看護者が, 性暴力または暴力被害女性に対する看護の経験を持っていた. 被害女性は, 精神科, 産婦人科, 救急外来をはじめ様々な診療科に受診または入院しており, 身体的な外傷の治療, 性感染症・妊娠の検査, 緊急避難が主な目的であった. 看護者は, 被害女性に対する精神的なケアに注意が向けられていたが, 連携や情報提供はほとんど行われていなかった. 被害女性への看護ケアに関する教育を受けたことがある看護者は1割程度であった. 初めて被害女性を看護した際の困難性は, 「看護ケアへの不全感」, 「同じ女性としての脅かし」, 「被害との距離」の3つの因子で構成されていた. 「同じ女性としての脅かし」は, 二次的外傷性ストレスに類似するものであった. 結論 : 性暴力・暴力被害女性をケアすることは稀なことではないにもかかわらず, ほとんどの看護者が教育を受けていないという現状であった. 適切なケアを提供するための看護者へのトレーニング, 具体的な看護ケアが示されたプロトコルの作成, 看護者へのサポートシステムを含めた医療における被害女性の支援システムの構築が今後必要である.
ISSN:1344-1922