日本語文献と英語文献におけるケア / ケアリング概念の比較分析

「要旨」日本において「ケア」という言葉がcareの邦語訳として使われ始めたのは第二次世界大戦後のことであり, 特に看護・医療界で用いられるようになったのは1970年代からである. 医療界において, ケアは一般的に看護ケアを意味している傾向にある. 一方, ケアリングという概念は日本の看護界においては比較的新しい概念であり, その適切な邦語訳は検討されずに現在に到っている. 英語圏において, ケアリングは看護実践・教育の中核として位置づけられ, 研究, 理論に多大な影響を与えている. 本研究の目的は, 日本人以外の著者により英語で書かれた文献(英語文献)と, 日本人の著者により日本語で書かれた文...

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Veröffentlicht in:聖路加看護学会誌 1997-06, Vol.1 (1), p.17-26
Hauptverfasser: 操華子, 羽山由美子, 菱沼典子, 岩井郁子, 香春知永
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「要旨」日本において「ケア」という言葉がcareの邦語訳として使われ始めたのは第二次世界大戦後のことであり, 特に看護・医療界で用いられるようになったのは1970年代からである. 医療界において, ケアは一般的に看護ケアを意味している傾向にある. 一方, ケアリングという概念は日本の看護界においては比較的新しい概念であり, その適切な邦語訳は検討されずに現在に到っている. 英語圏において, ケアリングは看護実践・教育の中核として位置づけられ, 研究, 理論に多大な影響を与えている. 本研究の目的は, 日本人以外の著者により英語で書かれた文献(英語文献)と, 日本人の著者により日本語で書かれた文献(日本語文献)から, 英語圏におけるケア/ケアリング概念と, 日本の看護界におけるケアの概念との比較分析を行うことである. 英語文献の結果は既に発表した先行研究の分析結果を用い, 今回対象とした日本語文献は, 事例検討, 総説, 概説, 研究論文を含む77編である. 英語文献から抽出したカテゴリー, サブカテゴリー, ケアリング属性を用いて, 日本語文献の内容分析を実施した. 英語文献の分析の結果, 5つのカテゴリーと13のサブカテゴリー, および102のケアリング属性が明らかになった. その5つのカテゴリーは, 看護婦の特性, 看護活動, 患者-看護婦(ケア提供者)の関係性, ケアリングによってもたらされるアウトカム, その他であった. 77編の日本語文献の分析の結果, 文献全体でケアという用語を使用していた文献と看護その他の言葉を使用していた文献とに大別された. 大別された文献の結果を比較すると, 各カテゴリーの全体における割合は, 両文献間で同様の傾向を示していた. ケア, 看護ケア, 看護, 援助などの用語は同義語的に使用されている傾向があり, これらの多くは看護行為を意味していることが示唆された. 日本語文献と英語文献との結果を比較すると, 文献から抽出されたケアリングの要素の数は異なっていたが, 各カテゴリーにおける件数の全体にしめる割合においては, 両文献共, 同様の傾向を示していた. このことから, 文化的要素, 言語の違いにかかわらず, ケア/ケアリング概念に対する共通の認識が存在することが明らかになった.
ISSN:1344-1922