道徳性・規範意識の芽生えから道徳教育へ - 「笑い」を用いた教材の提案

「1. 本稿の目的」かつてローレンツがその著『攻撃:悪の自然誌』で述べたように, 人間はそれほど理性的でも責任感に従って行動する動物でもない. 人間という動物の集団を火星などの別の惑星から客観的に眺めたとき, 閉じた同族の間では社交的に平和に暮らそうとし, 自分の仲間ではない者に対しては武器を用いた悪魔のように行動してしまう, それはいわばネズミと同じような社会集団である(ローレンツ, 1965/1970). 人間の道徳性は, 突き詰めれば社会に受け入れられることが目的であり, 社会における自分の立場を気にかけ, 単純に罰が怖い, ルールに従いたいという感情から"道徳的に"...

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Veröffentlicht in:名古屋女子大学紀要 家政・自然編 人文・社会編 2018-03 (64), p.111-118
1. Verfasser: 伊藤理絵
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「1. 本稿の目的」かつてローレンツがその著『攻撃:悪の自然誌』で述べたように, 人間はそれほど理性的でも責任感に従って行動する動物でもない. 人間という動物の集団を火星などの別の惑星から客観的に眺めたとき, 閉じた同族の間では社交的に平和に暮らそうとし, 自分の仲間ではない者に対しては武器を用いた悪魔のように行動してしまう, それはいわばネズミと同じような社会集団である(ローレンツ, 1965/1970). 人間の道徳性は, 突き詰めれば社会に受け入れられることが目的であり, 社会における自分の立場を気にかけ, 単純に罰が怖い, ルールに従いたいという感情から"道徳的に"振る舞うこともあり, 今や, 道徳性や利他主義は人間だけの特徴ではないとされている(ドゥ・ヴァール, 1996/1998). トロッコ問題やフィネアス・ゲージをはじめとした脳損傷研究でも明らかなように, 感情が時に道徳的認知に関与することは確かであり(信原, 2012), それが時に適応的に不適応的に働くことで人間社会が形成されているならば, 「感情のほどよい有効活用」(遠藤, 2015)をどのように教育の中で扱うか, 人間の発達を踏まえた教育の在り方を考える必要がある.
ISSN:2185-7962