三重県における合計特殊出生率の地域格差に関連する社会的要因について

目的 わが国における合計特殊出生率は,近年上昇傾向にあるが,先進国の中では最低水準にある。また合計特殊出生率には地域格差が存在し,三重県内の市町間でも差が生じている。この要因を検討することは,今後迎える超高齢化社会や地域医療問題への対応を考える上で重要である。本研究では三重県の市町別に,合計特殊出生率の地域格差に関連する社会的要因について探索的に分析した。方法 三重県29市町を調査対象とし,国勢調査や人口動態統計,または公開されている2010年~2014年の行政情報を収集した。先行研究に基づき,人口・世帯,住居,労働,医療,福祉,経済・行政基盤に関連する26項目を社会的要因として抽出した。 市...

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Veröffentlicht in:東海公衆衛生雑誌 2017/07/15, Vol.5(1), pp.151-160
Hauptverfasser: 英, 礁子, 山崎, 亨, 池田, 若葉, 田島, 和雄, 笽島, 茂
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:目的 わが国における合計特殊出生率は,近年上昇傾向にあるが,先進国の中では最低水準にある。また合計特殊出生率には地域格差が存在し,三重県内の市町間でも差が生じている。この要因を検討することは,今後迎える超高齢化社会や地域医療問題への対応を考える上で重要である。本研究では三重県の市町別に,合計特殊出生率の地域格差に関連する社会的要因について探索的に分析した。方法 三重県29市町を調査対象とし,国勢調査や人口動態統計,または公開されている2010年~2014年の行政情報を収集した。先行研究に基づき,人口・世帯,住居,労働,医療,福祉,経済・行政基盤に関連する26項目を社会的要因として抽出した。 市町別にみた合計特殊出生率の違いを,地理情報分析支援システムMANDARAを用いて観察した。また経年推移を観察するため,同期間の合計特殊出生率と出生数総数の抽出を行い,各市町における5年間の平均合計特殊出生率と平均出生数,それらの標準偏差について算出の上,記述した。 上記の社会的要因(2010年~2014年)を説明変数,合計特殊出生率(2014年)を目的変数として投入の上,ステップワイズ法にて重回帰分析を行った。解析にはSPSS ver.22.0およびSAS ver.9.4を使用し,両側検定5%を有意水準とした。結果 2014年の合計特殊出生率は伊勢志摩・東紀州地域で高く,北中勢・伊賀地域において低い傾向があり,地域格差が認められた。県の平均値は1.53(標準偏差0.24)であり,北勢にある木曽岬町で0.90と最小,東紀州にある御浜町で2.08と最大であった。 重回帰分析の結果,第一次産業就業者比率,完全失業率において合計特殊出生率と正の関連を認め,一方女性の未婚率,保健師数,保健衛生費では合計特殊出生率と負の関連がみられた。結論 三重県においては人口規模や財政力が小さく,農林漁業の産業構成割合が高い市町ほど合計特殊出生率が高い傾向である可能性が示唆された。また,晩婚化,晩産化の進行,女性の社会参加や高学歴化といった社会的背景が合計特殊出生率の低下に影響している可能性が示唆された。 より有用な分析結果を得るためには,出生・死亡だけではなく,転入,転出といった社会的な人口移動を含めた指標を解析する必要があると考えられる。さらに,今回の生態学的研究で得られた要因についての仮説を基に,既婚者を含め適齢期の男女を対象として,出産をアウトカムとした個人レベルでの縦断的な分析を行う必要性が示唆された。
ISSN:2187-736X
2434-0421
DOI:10.24802/tpha.5.1_151