散発性甲状腺篩型乳頭癌の 1 例

背景:甲状腺乳頭癌のまれな亜型である篩型乳頭癌の散発例について,細胞所見と生物学的特徴との間に興味深い関連性がみられたので報告する.症例:20 歳代,女性.甲状腺右葉に約 5 cm 大の腫瘤を認め,穿刺細胞診では乳頭状,濾胞状,篩状,シート状など多彩な構造を示す上皮集塊を認めた.核に核溝や核内細胞質封入体を認めたため乳頭癌を推定したが,摘出された腫瘍の病理組織診断は篩型乳頭癌であった.細胞像を詳細に観察すると,集塊の結合の緩い部位では高円柱状,紡錐形の細胞が目立ち,辺縁においてはしばしばほつれがみられ,周囲にはこれらの細胞が多数孤在性に分布していた.免疫染色にてβ-カテニンの発現を検索したとこ...

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Veröffentlicht in:日本臨床細胞学会雑誌 2022, Vol.61(5), pp.325-332
Hauptverfasser: 内田, 浩紀, 花見, 恭太, 安達, 純世, 石田, 康生, 山﨑, 一人
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:背景:甲状腺乳頭癌のまれな亜型である篩型乳頭癌の散発例について,細胞所見と生物学的特徴との間に興味深い関連性がみられたので報告する.症例:20 歳代,女性.甲状腺右葉に約 5 cm 大の腫瘤を認め,穿刺細胞診では乳頭状,濾胞状,篩状,シート状など多彩な構造を示す上皮集塊を認めた.核に核溝や核内細胞質封入体を認めたため乳頭癌を推定したが,摘出された腫瘍の病理組織診断は篩型乳頭癌であった.細胞像を詳細に観察すると,集塊の結合の緩い部位では高円柱状,紡錐形の細胞が目立ち,辺縁においてはしばしばほつれがみられ,周囲にはこれらの細胞が多数孤在性に分布していた.免疫染色にてβ-カテニンの発現を検索したところ,腫瘍細胞は核と細胞質が強陽性を示し,膜性の発現は低下・消失していた.結論:篩型乳頭癌細胞の集塊辺縁における細胞結合は緩く,孤在性の細胞が目立つ.これは Wnt シグナル経路の異常な活性化が引き起こすβ-カテニンの核内集積に伴う細胞接着性の低下が,篩型乳頭癌の特徴的な組織形態・細胞像にも影響を及ぼしていると考えられた.
ISSN:0387-1193
1882-7233
DOI:10.5795/jjscc.61.325