エレベータ停止とメッセージ掲示の一連の組み合わせによる職場における階段利用の促進

「要旨」【目的】本研究は, エレベータ停止と階段利用を促進するメッセージ掲示の一連の組み合わせが, 職場において, どのくらい階段利用を増加させるのかを評価することを目的とした. 【方法】A市の管理する5階建ての別館建物に勤務する市職員で, 同意が得られた60名を研究協力者として, 観察研究を行った. 市の管轄である1階から4階の72段の階段を対象に, それぞれ異なる29種類の階段利用を促進するメッセージを掲示した. エレベータと階段の利用状況は, 各期間の1日あたりの平均的な利用として自記式のアンケートにより後ろ向きに調査した. ベースライン調査(直近1か月における1日あたりの平均的な階段利...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要 2010-03, Vol.17, p.75-86
Hauptverfasser: 片山貴文, 佐野洋子, 深見薫, 松中茂登子, 松本和子, 塚本奈々, 前田育子, 梅原美紀, 辻由美, 河崎智子, 長谷川智子
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:「要旨」【目的】本研究は, エレベータ停止と階段利用を促進するメッセージ掲示の一連の組み合わせが, 職場において, どのくらい階段利用を増加させるのかを評価することを目的とした. 【方法】A市の管理する5階建ての別館建物に勤務する市職員で, 同意が得られた60名を研究協力者として, 観察研究を行った. 市の管轄である1階から4階の72段の階段を対象に, それぞれ異なる29種類の階段利用を促進するメッセージを掲示した. エレベータと階段の利用状況は, 各期間の1日あたりの平均的な利用として自記式のアンケートにより後ろ向きに調査した. ベースライン調査(直近1か月における1日あたりの平均的な階段利用の調査)の10日間後に, 10日間(勤務日数で7日)のエレベータのサービス停止があった. エレベータのサービス再開から9日後(エレベータと階段使用の両方とも利用可能であった期間)に, 2回目の調査(直近1週間における1日あたりの平均的な階段利用に関する調査)を実施した. 2回目の調査から3日後に, 階段使用を促進するメッセージを, 階段と壁に掲示した. これらのメッセージは, 3週間掲示した後に撤去した. 撤去の翌日に, 3回目の調査(直近2週間における1日あたりの平均的な階段利用に関する調査)を実施した. また, 撤去から1カ月後に, 追跡調査(直近3週間における1日あたりの平均的な階段利用に関する調査)を実施した. 【結果】階段利用率(昇りと下りの合計)は, エレベータ停止後で, ベースラインの53%から変化しなかった(オッズ比OR 1.03, 95%CI: 0.84 - 1.26). しかしながら, 3フロア以上の昇りは, ベースラインの16%から33%へと有意に増加した(OR 2.56, 95%CI: 1.56 - 4.21). メッセージの掲示後は, ベースラインの53%から64%へと統計学的に有意に変化した(OR 1.62, 95%CI: 1.31 - 1.99). この有意な増加は, 撤去して1カ月後も維持されていた(階段利用率62%, OR 1.45, 95%CI: 1.18 - 1.79). これらの階段昇りの増加は, 男性, 40歳以上, 4階職員, 運動習慣がない者で, 有意な増加を示していた. ただし, 性, 年齢, 勤務場所は, お互いに関係があり, これらの階段昇りの増加は, 主に4階職員が影響を及ぼしていると思われた. 【結論】エレベータ停止とメッセージ貼り付けの一連の組み合わせは, 総移動に対する階段利用率を10ポイント以上増加させる効果があり, これはメッセージ刺激を撤去してからも持続していた. エレベータ停止と階段利用を促進するメッセージの掲示は, コストも人手もかからないため, 職場において, 健康を増進するためのポピュレーション・アプローチになると思われる.
ISSN:1881-6592