『各論』血液疾患と遺伝子治療

「I. はじめに」遺伝子治療は, 疾患の遺伝子異常の解明とともに, 遺伝子そのものを修復することにより, 正常な機能を回復し病気を治す治療法である. したがってその有用性に過剰な期待が寄せられてきた. また, 遺伝子治療は厳格な倫理規制と管理化で行うべき医療でありながら, その黎明期よりややもするとそれらを軽視した研究に陥りがちであった. 現在では, 本邦および欧米において4,000例を超える臨床試験が計画かつ実施されており, これらの臨床試験がきわめて厳格な倫理と安全基準に基づいて管理されているはずであった. しかし, 1999年ペンシルバニアでのGelsinger事件で, オルニチントラン...

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Veröffentlicht in:聖マリアンナ医科大学雑誌 2002-02, Vol.30 (1), p.63-68
Hauptverfasser: 小池満, 加藤雅之, 長谷川誠一, 高橋正知
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「I. はじめに」遺伝子治療は, 疾患の遺伝子異常の解明とともに, 遺伝子そのものを修復することにより, 正常な機能を回復し病気を治す治療法である. したがってその有用性に過剰な期待が寄せられてきた. また, 遺伝子治療は厳格な倫理規制と管理化で行うべき医療でありながら, その黎明期よりややもするとそれらを軽視した研究に陥りがちであった. 現在では, 本邦および欧米において4,000例を超える臨床試験が計画かつ実施されており, これらの臨床試験がきわめて厳格な倫理と安全基準に基づいて管理されているはずであった. しかし, 1999年ペンシルバニアでのGelsinger事件で, オルニチントランスカルボミラーゼ欠損症に対するin vivo遺伝子治療による17歳の患者さんの副作用死が, 遺伝子治療先進国である米国において, 衝撃的事件として報道された. この事件は研究者や関係者に反省を促し, 本事件の再発を防ぐためには, 単に研究計画の許認可だけではなく, 研究開始後の継続的な臨床研究監視システムの構築が必須と考えられている.
ISSN:0387-2289