「一事例研究」が有する看護学への貢献

要旨 看護学における一事例研究の利点は,意味ある成果からの遡及推論により焦点化した検証が出来ること,看護実践の背景を描くことが出来て場面に応じた具体的実践のヒントを示せること,物語性によって読者を触発できることである. これらの利点は,一回性の実践によって産み出された看護実践の妙技に含まれるフロネーシス(実践知)を顕在化させるのに役立つ.近代的科学観においては「観察や実験など経験的方法に基づいて実証された法則的知識」を重視している.一方,看護は対象の個別的ニーズに対応する特徴を持っており,実践において科学的知識を基盤としながらも,即興的・偶発的に個別に対応しつつ,フロネーシスを生みだしている....

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Veröffentlicht in:日本看護科学会誌 2021, Vol.41, pp.718-722
1. Verfasser: 柄澤 清美
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:要旨 看護学における一事例研究の利点は,意味ある成果からの遡及推論により焦点化した検証が出来ること,看護実践の背景を描くことが出来て場面に応じた具体的実践のヒントを示せること,物語性によって読者を触発できることである. これらの利点は,一回性の実践によって産み出された看護実践の妙技に含まれるフロネーシス(実践知)を顕在化させるのに役立つ.近代的科学観においては「観察や実験など経験的方法に基づいて実証された法則的知識」を重視している.一方,看護は対象の個別的ニーズに対応する特徴を持っており,実践において科学的知識を基盤としながらも,即興的・偶発的に個別に対応しつつ,フロネーシスを生みだしている.「理論と実践の実りある関係」を形成するためには,フロネーシスを掬い取り,蓄積していく取り組みが必要であり,一事例研究は,それに貢献できると考える.
ISSN:0287-5330
2185-8888
DOI:10.5630/jans.41.718