不確実性の中での決断―無症候性脳血管障害患者の診断から予防的手術への決断のプロセス

要旨 本研究の目的は,無症候性脳血管障害患者の予防的手術への決断のプロセスを検討することである.無症候性脳血管障害に対する予防的治療はいまだ不確実性の多い領域であり,手術の有効性や妥当性の証明が急がれる一方で,患者の体験の実態はほとんどわかっていない.15名の対象者から聞き取った内容を分析した結果,決断のプロセスには時間的経過の中で変化する時間的カテゴリーと,そのプロセスに絡む要因的カテゴリーの2つの軸で説明できた.時間的カテゴリーは『混乱』『迷い/揺らぎ』『見込みの吟味』『賭けに出る決断』であり,要因的カテゴリーは内的に生じる《病気との距離感》《一時的な病人化》と外的な人的資源との関係から生...

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Veröffentlicht in:日本看護科学会誌 2005/03/20, Vol.25(1), pp.13-22
Hauptverfasser: 山本 直美, 津田 紀子, 矢田 眞美子, 石川 雄一
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:要旨 本研究の目的は,無症候性脳血管障害患者の予防的手術への決断のプロセスを検討することである.無症候性脳血管障害に対する予防的治療はいまだ不確実性の多い領域であり,手術の有効性や妥当性の証明が急がれる一方で,患者の体験の実態はほとんどわかっていない.15名の対象者から聞き取った内容を分析した結果,決断のプロセスには時間的経過の中で変化する時間的カテゴリーと,そのプロセスに絡む要因的カテゴリーの2つの軸で説明できた.時間的カテゴリーは『混乱』『迷い/揺らぎ』『見込みの吟味』『賭けに出る決断』であり,要因的カテゴリーは内的に生じる《病気との距離感》《一時的な病人化》と外的な人的資源との関係から生じる《医師とのつながり感》《家族機能へのこだわり感》であった.また,患者は診断後に直感的に発症の予感を強く抱き,不確実性の中で厳しい決断を下し手術に立ち向かっていた.しかし,この決断のプロセスを支援する看護師の存在はきわめて希薄であった.今後,無症候性脳血管障害患者は増えると予測されている.看護師は患者を取り巻く人的資源として医師や家族とは別にその役割を明確に示していく必要がある.
ISSN:0287-5330
2185-8888
DOI:10.5630/jans1981.25.1_13