脳脊髄液と血漿のCrizotinib濃度を測定した高齢者ALK融合遺伝子陽性肺腺癌の1例

背景.ALK阻害剤であるCrizotinibは,ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に対する有効性が示されている.脳脊髄液と血漿のCrizotinib濃度を測定した報告は散見されるが比較的若年者の報告であり,高齢者の報告はない.症例.86歳男性.頭痛,歩行障害で当院神経内科を受診した.頭部MRIで多発結節影,胸部CTで右肺結節影と右胸水,肺門および縦隔リンパ節腫大を認め,呼吸器科へ紹介された.精査の結果,ALK融合遺伝子陽性肺腺癌(cT1aN3M1b stage IV)と診断した.Crizotinibで治療すると胸部病変,転移性脳腫瘍の縮小を認め,胸水も消失した.脳脊髄液と血漿のCrizotini...

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Veröffentlicht in:肺癌 2017/12/20, Vol.57(7), pp.832-837
Hauptverfasser: 杉山, 陽介, 中治, 仁志, 阪森, 優一, 寺下, 聡, 塩田, 哲広
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:背景.ALK阻害剤であるCrizotinibは,ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に対する有効性が示されている.脳脊髄液と血漿のCrizotinib濃度を測定した報告は散見されるが比較的若年者の報告であり,高齢者の報告はない.症例.86歳男性.頭痛,歩行障害で当院神経内科を受診した.頭部MRIで多発結節影,胸部CTで右肺結節影と右胸水,肺門および縦隔リンパ節腫大を認め,呼吸器科へ紹介された.精査の結果,ALK融合遺伝子陽性肺腺癌(cT1aN3M1b stage IV)と診断した.Crizotinibで治療すると胸部病変,転移性脳腫瘍の縮小を認め,胸水も消失した.脳脊髄液と血漿のCrizotinib濃度を測定すると,脳脊髄液濃度(2.09 ng/ml)と脳脊髄液/血漿比(0.0048)は過去の報告と比べ高値であった.投与開始7か月後に転移性脳腫瘍の増大と右胸水の出現を認めたため,Alectinibへ変更した.Alectinib開始後は転移性脳腫瘍と胸水の消失を認め,Alectinib開始22か月後も治療継続中である.結論.転移性脳腫瘍を有する高齢者ALK融合遺伝子陽性肺腺癌の脳脊髄液と血漿のCrizotinib濃度を測定した.高齢者ではCrizotinibの脳脊髄液への移行性が若年者と比較し良好な可能性がある.
ISSN:0386-9628
1348-9992
DOI:10.2482/haigan.57.832