職業性石綿曝露歴のある患者に発症した,胸膜転移を伴う乳頭状腎細胞癌の1例

背景.肺内転移を伴わない腎細胞癌の胸膜への単独転移は稀である.我々は胸膜転移による大量胸水で発症した乳頭状腎細胞癌の1例を経験したので,報告する.症例.アスベスト曝露歴を有する66歳男性.慢性糸球体腎炎による腎不全で23年間の血液透析中に,左大量胸水による呼吸困難及び全身倦怠感を来し,精査目的で紹介入院となった.胸腹部CTで肺野病変を伴わない左大量胸水と右腎腫瘤を認め,腎細胞癌や肺癌,悪性胸膜中皮腫が疑われた.胸水細胞診で核が類円形に腫大し,一部は多核化した異型細胞を認めたが,胸水セルブロックを用いた免疫染色で組織診断に至らず.全身状態が急速に悪化し,胸膜生検を行えず,第10病日に慢性腎不全の...

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Veröffentlicht in:肺癌 2017/02/20, Vol.57(1), pp.29-34
Hauptverfasser: 田尻, 智子, 佐渡, 紀克, 祖開, 暁彦, 後藤, 健一, 中村, 保清, 北, 英夫
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:背景.肺内転移を伴わない腎細胞癌の胸膜への単独転移は稀である.我々は胸膜転移による大量胸水で発症した乳頭状腎細胞癌の1例を経験したので,報告する.症例.アスベスト曝露歴を有する66歳男性.慢性糸球体腎炎による腎不全で23年間の血液透析中に,左大量胸水による呼吸困難及び全身倦怠感を来し,精査目的で紹介入院となった.胸腹部CTで肺野病変を伴わない左大量胸水と右腎腫瘤を認め,腎細胞癌や肺癌,悪性胸膜中皮腫が疑われた.胸水細胞診で核が類円形に腫大し,一部は多核化した異型細胞を認めたが,胸水セルブロックを用いた免疫染色で組織診断に至らず.全身状態が急速に悪化し,胸膜生検を行えず,第10病日に慢性腎不全の悪化で永眠された.剖検で右腎腫瘤と左側優位の胸膜肥厚及び多発小結節を認め,腎腫瘤及び胸膜の免疫染色を経て乳頭状腎細胞癌の胸膜転移と診断した.結論.アスベスト曝露歴を有する悪性胸水貯留例でも,他臓器癌の胸膜転移の可能性があり,組織採取と病理組織学的診断に努めることが重要である.
ISSN:0386-9628
1348-9992
DOI:10.2482/haigan.57.29