高精度量子化学計算による光生物学へのアプローチ:レチナールタンパク質の光吸収・励起エネルギー移動機構

「1.はじめに」 理論・計算の立場から光生物学の研究を試みる際の大きな問題点は次の2点である. 1, 分子の正確な励起状態をどう求めるか? 2, タンパク質環境をどう記述するか?それぞれの問題に対して有効な手段となるのが, SAC-CI(symmetry-adapted cluster-configuration interaction)法1)とQM/MM(quantum mechanics/molecular mechanics)法2)である. 本稿では, これらの手法の適用により明らかとなったレチナールタンパク質の分子機構を2つ紹介する. 前半ではヒトの色覚を司る錐体視物質のカラー・チュー...

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Veröffentlicht in:生物物理 2011, Vol.51(3), pp.140-143
1. Verfasser: 藤本, 和宏
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「1.はじめに」 理論・計算の立場から光生物学の研究を試みる際の大きな問題点は次の2点である. 1, 分子の正確な励起状態をどう求めるか? 2, タンパク質環境をどう記述するか?それぞれの問題に対して有効な手段となるのが, SAC-CI(symmetry-adapted cluster-configuration interaction)法1)とQM/MM(quantum mechanics/molecular mechanics)法2)である. 本稿では, これらの手法の適用により明らかとなったレチナールタンパク質の分子機構を2つ紹介する. 前半ではヒトの色覚を司る錐体視物質のカラー・チューニング機構を, 後半ではキサントロドプシンで起こる励起エネルギー移動機構を取り上げる. ここで, カラー・チューニングとはタンパク質環境の違いによって分子の吸収波長が変化する現象を指し, 励起エネルギー移動とはある分子の吸収した光エネルギーが別の分子に移動する現象を指す. どちらもレチナールタンパク質の光吸収に関する話題であるが, 担当する役者が異なることに注意しながら読んでいただきたい. 前半の錐体視物質ではタンパク質の形成する静電ポテンシャルが, 後半のキサントロドプシンではカロテノイド分子の配置がそれぞれの機構に大きく寄与している.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.51.140