近接場ラマン顕微鏡によるナノメートル観察

「1.はじめに」 近接場光学顕微鏡は「光で」「ナノで」「大気中/液中で」試料を観察できる. これらの特徴は, 生物学研究において大いに有用であり, これまで多くの方々から興味をもっていただいた. 筆者らは, 近接場光学顕微鏡, 特に先端増強型のそれの開発に取り組み, 分解能, 感度を向上させると同時に, いつでも誰でも使える実用的な装置としての技術確立をめざしている. 本稿では, 先端増強型近接場光学顕微鏡の最新の研究動向を, 筆者らのグループの研究成果を中心に紹介し, 広く応用されるための今後の課題について述べる. 「2. 先端増強型近接場ラマン顕微鏡」 先端増強型の近接場光学顕微鏡では,...

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Veröffentlicht in:生物物理 2010, Vol.50(6), pp.300-301
Hauptverfasser: 市村, 垂生, 河田, 聡
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「1.はじめに」 近接場光学顕微鏡は「光で」「ナノで」「大気中/液中で」試料を観察できる. これらの特徴は, 生物学研究において大いに有用であり, これまで多くの方々から興味をもっていただいた. 筆者らは, 近接場光学顕微鏡, 特に先端増強型のそれの開発に取り組み, 分解能, 感度を向上させると同時に, いつでも誰でも使える実用的な装置としての技術確立をめざしている. 本稿では, 先端増強型近接場光学顕微鏡の最新の研究動向を, 筆者らのグループの研究成果を中心に紹介し, 広く応用されるための今後の課題について述べる. 「2. 先端増強型近接場ラマン顕微鏡」 先端増強型の近接場光学顕微鏡では, 先鋭な金属ナノ探針を用いる(図1a). 探針先端に光照射すると, 金属内の自由電子が強く揺らされ, 光強度が先端近傍で増強され, 局在する(図1b)1). この局在光を近接場光という. 探針を, 観察したい試料に近づけると, 近接場光の中にある試料分子のみを光励起することができる. 近接場光の空間的広がりは, 探針先端径程度 (数10nm)であり, これが顕微鏡としての空間分解能を決める. 試料(または探針)を走査することにより, 光の回折限界をはるかに超えた光学イメージングが可能となる. 探針としては通常, 金属化した原子間力顕微鏡(AFM)探針や走査トンネル顕微鏡(STM)探針を用いる. 近接場光学顕微鏡には, 先鋭化された光ファイバープローブを用いる方式(いわゆる開口型)もあり, 現時点ではこちらの方が広く市販されてはいるが, 分解能・感度とも先端増強型の方が優れている.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.50.300