脳の層構造形成を司る細胞外タンパク質リーリンの構造生物学

「1. はじめに」 ほ乳類の脳の形づくりは, 無数のニューロンが誕生後に正しい場所に移動し, 秩序だった層構造を形成することで達成される. 脳の形成とニューロンの移動に関する研究の事始めは, リーラーとよばれる突然変異マウスの発見である. 見た目は普通のマウスだが, ふらふら歩くといった運動失調を示し, 脳の層構造におけるニューロンの配置に異常が認められる. リーラーは脳の形成を研究する上で, 今もなお重要なモデル動物であり続けている1). リーリンタンパク質はリーラーの原因遺伝子産物として同定された2). この発見は, 脳の層構造形成の分子レベルでの研究で, 最初のブレークスルーとなった....

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Veröffentlicht in:生物物理 2008, Vol.48(4), pp.235-238
Hauptverfasser: 安井, 典久, 禾, 晃和, 高木, 淳一
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「1. はじめに」 ほ乳類の脳の形づくりは, 無数のニューロンが誕生後に正しい場所に移動し, 秩序だった層構造を形成することで達成される. 脳の形成とニューロンの移動に関する研究の事始めは, リーラーとよばれる突然変異マウスの発見である. 見た目は普通のマウスだが, ふらふら歩くといった運動失調を示し, 脳の層構造におけるニューロンの配置に異常が認められる. リーラーは脳の形成を研究する上で, 今もなお重要なモデル動物であり続けている1). リーリンタンパク質はリーラーの原因遺伝子産物として同定された2). この発見は, 脳の層構造形成の分子レベルでの研究で, 最初のブレークスルーとなった. 事実, リーリンの同定を端緒に, リーリン受容体やアダプタータンパク質など, さまざまな脳の層構造形成に関与する分子群が次々と発見されている(図1b参照)3). 本稿では, 近年になって明らかにされたリーリンタンパク質の立体構造および受容体との相互作用の構造化学的な基盤について, 筆者らの研究を中心に概説する.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.48.235