力学的刺激に対する血管内皮細胞の応答現象

「1. はじめに」血管は全長が10万キロメートルにも及んでおり, その内腔面は単層の血管内皮細胞で隙間なく覆われている. 内皮細胞は, 生体の恒常性を維持するためにさまざまな生理活性物質を産生し, 血管系の調節や血小板の粘着・凝集の調節などの重要な機能を有している. ところで, 内皮細胞は存在位置の特異性により, 血流によるせん断応力や圧力, あるいは壁の伸展による引っ張り力などの力学的刺激に絶えず曝されており, 内皮細胞の多彩な機能はこうした複雑な力学的刺激の影響を受けていることが指摘されてきた. 特に, アテローム性動脈硬化症は血管の曲がり部や分岐部など血流が複雑である部位に好発することか...

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Veröffentlicht in:生物物理 2003, Vol.43(3), pp.136-141
Hauptverfasser: 大橋, 俊朗, 佐藤, 正明
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「1. はじめに」血管は全長が10万キロメートルにも及んでおり, その内腔面は単層の血管内皮細胞で隙間なく覆われている. 内皮細胞は, 生体の恒常性を維持するためにさまざまな生理活性物質を産生し, 血管系の調節や血小板の粘着・凝集の調節などの重要な機能を有している. ところで, 内皮細胞は存在位置の特異性により, 血流によるせん断応力や圧力, あるいは壁の伸展による引っ張り力などの力学的刺激に絶えず曝されており, 内皮細胞の多彩な機能はこうした複雑な力学的刺激の影響を受けていることが指摘されてきた. 特に, アテローム性動脈硬化症は血管の曲がり部や分岐部など血流が複雑である部位に好発することから, 20年ほど前から流れによるせん断応力と内皮細胞の力学応答といった観点から盛んに研究が行われてきた. 実際に, 培養内皮細胞に流れによるせん断応力を負荷すると細胞は流れの方向に伸長・配向する1)-3).
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.43.136