視物質における吸収波長制御機構: アニオンによる制御を中心として

1. はじめに ヒトを含む霊長類を始めとして, 多くの脊椎動物は色を見分ける能力をもつ. この色識別能(色覚)はさまざまな波長感受性をもつ光受容タンパク質(視物質)によって実現される. これまで視物質の色感受性に関する研究は, 比較的簡単かつ大量に調製可能なロドプシン(Rh)を実験材料として行われ, その物理化学的性質が詳細に調べられてきた. しかしRhは, 薄暗がりで働き,色覚には関与しない桿体視細胞に含まれる視物質である. これに対して, 実際に色覚を担う錐体視細胞の視物質(錐体視物質)を用いた研究は, 試料調製の困難さからほとんど行われてこなかった. 最近になって生化学的・物理化学的研究...

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Veröffentlicht in:生物物理 2001, Vol.41(6), pp.284-289
Hauptverfasser: 平野, 貴弘, 七田, 芳則
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:1. はじめに ヒトを含む霊長類を始めとして, 多くの脊椎動物は色を見分ける能力をもつ. この色識別能(色覚)はさまざまな波長感受性をもつ光受容タンパク質(視物質)によって実現される. これまで視物質の色感受性に関する研究は, 比較的簡単かつ大量に調製可能なロドプシン(Rh)を実験材料として行われ, その物理化学的性質が詳細に調べられてきた. しかしRhは, 薄暗がりで働き,色覚には関与しない桿体視細胞に含まれる視物質である. これに対して, 実際に色覚を担う錐体視細胞の視物質(錐体視物質)を用いた研究は, 試料調製の困難さからほとんど行われてこなかった. 最近になって生化学的・物理化学的研究に十分な量の錐体視物質を視細胞から分離・精製する技術, さらには培養細胞系での発現技術も確立され, さまざまな波長感受性を持つ錐体視物質の波長制御機構が実際のテーマとして浮かびあがってきた. 視物質の吸収波長は, 光を吸収する発色団とその周りのアミノ酸残基との相互作用によって決まる.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.41.284