フォルミンINF2変異による家族性巣状分節性糸球体硬化症の同胞例

【はじめに】 家族性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は, 遺伝形式から常染色体優性と劣性に分けられる. 疾患遺伝子として, 前者ではACTN4 (α actinin-4), TRPC6 (Transient receptor potential cation channel), INF2 (inverted formin 2)などが, 後者ではNPHS1 (nephrin), NPHS2 (podocin), LAMB2 (laminin β2)などがある. INF2変異は欧米の優性FSGSの1-2割に見つかり, 優性型遺伝子としては検出率の首位を占めるが, 本邦例における役割は不明であった...

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Hauptverfasser: 日高義彦, 小池涼介, 塩入崇弘, 野田俊輔, 小池健一, 木下達也, 塚口裕康
Format: Tagungsbericht
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:【はじめに】 家族性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は, 遺伝形式から常染色体優性と劣性に分けられる. 疾患遺伝子として, 前者ではACTN4 (α actinin-4), TRPC6 (Transient receptor potential cation channel), INF2 (inverted formin 2)などが, 後者ではNPHS1 (nephrin), NPHS2 (podocin), LAMB2 (laminin β2)などがある. INF2変異は欧米の優性FSGSの1-2割に見つかり, 優性型遺伝子としては検出率の首位を占めるが, 本邦例における役割は不明であった. 【症例】 父が腎不全で治療中である. 症例1は兄で8歳時に学校検尿で蛋白尿を指摘され, 11歳時にFSGSと診断された. プレドニゾロン(PSL), シクロスポリン(CyA)などで治療されたが効果なく, 13歳時に透析導入となり, 20歳時に腎移植を施行した. 症例2は妹. 11歳時に学校検尿で蛋白尿を指摘され, 13歳時にFSGSと診断された. PSL, CyA無効で, 23歳時にpre-emptive腎移植を施行した. 両者とも移植後再発は認めていない. INF2の全23エクソンを解析したところ, 2患者はミスセンス変異(エクソン3, c.485 T>C, p.L162P)のヘテロ接合体であることがわかった. 患児にエクソン3以外の変異はなかった. また父の検査は未施行であるが, 母にはp.L162Pがなかった. 【考察】 本例においてp.L162Pは, (1)既報INF2変異の好発領域に位置する, (2)アレル頻度が0.1%以下, (3)変異予測プログラムでDamaging, (4)罹患父から2患児へとsegregateしていると推測される, ことから, FSGSの原因と考えられる. INF2はポドサイト足突起のアクチン重合を制御するフォルミンをコードしており, 細胞骨格の脆弱性がFSGSの発症に関与すると考えられる. INF2変異は本邦の他の優性遺伝3家系にも検出され, アレル頻度の人種差は少ないと思われる. 本例のような学童期発症のFSGS親子例では, 薬剤治療計画や腎移植ドナー選定・再発予測のためにINF2遺伝子の検索が有用である.
ISSN:0915-2245