癌患者を支える家族のQOL

「はじめに」近年, 癌患者の増加や核家族化に伴い, 癌患者の家族の抱える健康問題はより複雑で多様化しており, 家族看護の重要性がさらに増してきている. 癌は, 1981年以来, 日本人の死因順位別死亡数の第一位を占め, 増加の一途をたどっている. 厚生労働省発表の2000年の統計では, 癌による死亡者は約29万5千人であり, 全死亡者の31%であった1). 現在では, 癌が必ずしも死に直結した疾病ではなくなったとはいえ, 最も恐れられる病のひとつであることに変わりはなく, 癌に罹患することは, 良性疾患とは根本的に異なり, 患者と患者を取り巻く者に対して, 生命を脅かされるという, 極めて衝撃...

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Veröffentlicht in:米子医学雑誌 2002, Vol.53 (3), p.199-206
Hauptverfasser: 平井由佳, 平松喜美子, 長澤順子, 永見瑠美子, 井山寿美子, 倉鋪桂子, 松尾ミヨ子, 池田匡
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「はじめに」近年, 癌患者の増加や核家族化に伴い, 癌患者の家族の抱える健康問題はより複雑で多様化しており, 家族看護の重要性がさらに増してきている. 癌は, 1981年以来, 日本人の死因順位別死亡数の第一位を占め, 増加の一途をたどっている. 厚生労働省発表の2000年の統計では, 癌による死亡者は約29万5千人であり, 全死亡者の31%であった1). 現在では, 癌が必ずしも死に直結した疾病ではなくなったとはいえ, 最も恐れられる病のひとつであることに変わりはなく, 癌に罹患することは, 良性疾患とは根本的に異なり, 患者と患者を取り巻く者に対して, 生命を脅かされるという, 極めて衝撃的な体験をもたらす. 結果として心理状態や社会面, 家族関係にも影響を及ぼし, これらが患者の適応やQOLに関連する重要な因子となる2). そして, 患者の身体的・精神的・社会的状況の変化に伴って, 患者自身のみならず, その家族にも変化が現れると予測される. 1990年にWHOは, 癌患者の緩和ケアの目標を「患者の看護のゴールは, 患者および家族のために, できる限り最良のquality of life(QOL)を達成することにある」と提言した. QOLの捉え方は様々であるが, 筒井3)は「QOLの評価には, 客観的指標は, 体験そのものではなく, 体験に影響を及ぼしている事柄を医療者が測定しているに過ぎず, 主観的指標は, 人生の体験を査定している」と述べ, 主観的指標で測定することの重要性を強調している.
ISSN:0044-0558