甲状軟骨形成術II型成功のための前交連周囲の手術手技

「はじめに」甲状軟骨形成術は甲状軟骨を操作することによって, 声帯の位置や緊張度を変える手術である. このなかで甲状軟骨形成術II型は, 声帯を側方へ移動させることによって過度の声門閉鎖による音声障害を改善させる手術法である. 内転型痙攣性発声障害に対する手術の一法として, 前交連を開大し両側声帯を側方へ移動させる甲状軟骨形成術II型の有用性をIsshikiは報告している. この手術のポイントは“甲状軟骨を正中で切開・離断し両側方へ開大することによって, それに付着する前交連を開大し適切な位置に両声帯を側方移動させること”である. 本論文では甲状軟骨形成術II型を行うにあたり, 前交連を開大し適切な位置に両声帯を側方移動させる操作を確実に行うためには, どのような点に注意し手術を行うべきかを前交連の臨床解剖と手術症例の喉頭所見を対比して検討した. また甲状軟骨の開大を効果的に行うために, 一色が考案した専用スプレッダーの有用性についても検討した.