耳鼻咽喉科臨床の進歩: 上気道炎症とワクチン療法

上気道は感染およびアレルギーの標的臓器であり, その発症頻度がきわめて高いことから, これらの疾患を予防するためのワクチン開発が望まれている. 上気道感染症の主要な起炎菌である肺炎球菌に対するワクチンとして, すでに蛋白結合莢膜多糖体ワクチンが臨床で用いられ, 小児中耳炎に対する有効性が報告されている. ところが, その一方で, 他の異なる莢膜型を持つ肺炎球菌やインフルエンザ菌による中耳炎が増加しつつある. 従って, 中耳炎発症の予防には, すべての菌株に共通な抗原性を持つワクチンを開発する必要があり, 肺炎球菌細胞膜蛋白やインフルエンザ菌外膜蛋白がその有力な候補に挙げられている. われわれは...

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Veröffentlicht in:日本耳鼻咽喉科学会会報 2008, Vol.111(11), pp.689-694
Hauptverfasser: 黒野, 祐一, 田中, 紀充, 福岩, 達哉, 宮下, 圭一, 早水, 佳子
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:上気道は感染およびアレルギーの標的臓器であり, その発症頻度がきわめて高いことから, これらの疾患を予防するためのワクチン開発が望まれている. 上気道感染症の主要な起炎菌である肺炎球菌に対するワクチンとして, すでに蛋白結合莢膜多糖体ワクチンが臨床で用いられ, 小児中耳炎に対する有効性が報告されている. ところが, その一方で, 他の異なる莢膜型を持つ肺炎球菌やインフルエンザ菌による中耳炎が増加しつつある. 従って, 中耳炎発症の予防には, すべての菌株に共通な抗原性を持つワクチンを開発する必要があり, 肺炎球菌細胞膜蛋白やインフルエンザ菌外膜蛋白がその有力な候補に挙げられている. われわれは, すべてのグラム陽性菌そして陰性菌の細胞膜に存在するホスホリルコリン (PC) に注目し, その免疫原性およびワクチンとしての有用性を検討している. ワクチンの投与経路には注射によって全身免疫を誘導する方法と経鼻あるいは舌下投与など粘膜免疫応答を誘導する方法がある. そこで, PCをコレラトキシン (CT) とともにマウスに経鼻投与したところ, 鼻腔洗浄液や唾液中にPC特異的IgA抗体活性の上昇が認められた. そして, この免疫応答は菌株の異なる種々の肺炎球菌やインフルエンザ菌とも交叉反応した. また, 同じ抗原をマウスに舌下投与したところ, 経鼻投与と同様の粘膜免疫応答が誘導され, IgE応答は経鼻免疫よりもむしろ低かった. 従って, 上気道感染症に対して舌下ワクチンは経鼻ワクチンに等しい予防効果を持ち, 安全性は経鼻ワクチンよりも高いと推測された.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.111.689