核DNA量からみた鼻副鼻腔乳頭腫の悪性変化に関する臨床病理学的研究

頭頸部腫瘍の中で鼻副鼻腔の乳頭腫は, 比較的まれな良性腫瘍である. しかしその組織学的形態, 易再発性, 悪性腫瘍の合併, 悪性変化の点から他の鼻副鼻腔良性腫瘍とは異なった臨床的特徴をもっている. 本研究では, 東邦大学医学部第一耳鼻咽喉科において1975年から1994年の20年間に手術を施行した鼻副鼻腔の乳頭腫30例を対象として, 臨床的検討, 病理組織学的検討に加えパラフィン包埋切片を用いてフローサイトメトリーによる核DNA量の測定を行い, aneuploidの検出について検討した. 腫瘍発生部位は上顎洞自然孔周囲が19例で最も多く, 次いで鼻中隔が7例であった. 骨破壊は12例に認められ...

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Veröffentlicht in:日本耳鼻咽喉科学会会報 1998, Vol.101 (10), p.1266-1275
1. Verfasser: 寺山善博
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:頭頸部腫瘍の中で鼻副鼻腔の乳頭腫は, 比較的まれな良性腫瘍である. しかしその組織学的形態, 易再発性, 悪性腫瘍の合併, 悪性変化の点から他の鼻副鼻腔良性腫瘍とは異なった臨床的特徴をもっている. 本研究では, 東邦大学医学部第一耳鼻咽喉科において1975年から1994年の20年間に手術を施行した鼻副鼻腔の乳頭腫30例を対象として, 臨床的検討, 病理組織学的検討に加えパラフィン包埋切片を用いてフローサイトメトリーによる核DNA量の測定を行い, aneuploidの検出について検討した. 腫瘍発生部位は上顎洞自然孔周囲が19例で最も多く, 次いで鼻中隔が7例であった. 骨破壊は12例に認められた. 病理組織所見では内方発育型乳頭腫17例, 外方発育型乳頭腫13例であり異型性が4例に認められた. 再発は9症例に認められ, 悪性変化は5症例に認められた. 核DNA量においてdiploidは25例(83.3%)に認められ, 一方aneuploidは5例(16.7%)に認められた. 鼻副鼻腔乳頭腫の悪性変化の危険因子として1)発育形態, 2)骨破壊の存在, 3)異型性の存在, 4)悪性変化までの再発の有無5)aneuploidの存在, の5項目が重要であると考えた. 悪性変化を起こした5症例は全例この5項目中4項目目を満たしていた. この5項目中4項目以上を満たす鼻副鼻腔乳頭腫は悪性変化を起こす可能性が高いことが示唆された. また, 悪性変化までの期間は一定せず, 10年以上経過してから悪性変化を起こした症例もある. そのため長期に及ぶ経過観察が必要である.
ISSN:0030-6622
DOI:10.3950/jibiinkoka.101.10_1266