蝸牛神経の伝導障害 -腫瘍摘出後に聴覚所見の著明改善をみた小脳橋角部腫瘍5症例

「I はじめに」聴神経腫瘍(acoustic neuroma: 以下ANと略す)や髄膜腫・類上皮腫などの小脳橋角部腫瘍では, ほとんどの症例で難聴を認める. この難聴の病態は複雑で症例ごとに異なるが, 基本的には内耳性障害と蝸牛神経障害が混在したものであり, 1)腫瘍による蝸牛神経障害, 2)腫瘍による内耳道内血管の圧排による感覚上皮障害と3)内耳液の生化学的変化で説明される1). このうち蝸牛神経障害には, 腫瘍組織の浸潤や圧排のための軸索の変性と, 伝導障害の2つの病態が考えられる. しかし, Ylikoskiら2)の報告にあるように, ANでは前庭神経と比べて, 蝸牛神経への腫瘍の浸潤は...

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Veröffentlicht in:日本耳鼻咽喉科学会会報 1993-01, Vol.96 (1), p.24-167
Hauptverfasser: 深谷卓, 畑裕子, 小松崎篤
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:「I はじめに」聴神経腫瘍(acoustic neuroma: 以下ANと略す)や髄膜腫・類上皮腫などの小脳橋角部腫瘍では, ほとんどの症例で難聴を認める. この難聴の病態は複雑で症例ごとに異なるが, 基本的には内耳性障害と蝸牛神経障害が混在したものであり, 1)腫瘍による蝸牛神経障害, 2)腫瘍による内耳道内血管の圧排による感覚上皮障害と3)内耳液の生化学的変化で説明される1). このうち蝸牛神経障害には, 腫瘍組織の浸潤や圧排のための軸索の変性と, 伝導障害の2つの病態が考えられる. しかし, Ylikoskiら2)の報告にあるように, ANでは前庭神経と比べて, 蝸牛神経への腫瘍の浸潤は少なく, 軸索の変性もはるかに少ない. ましてや髄膜腫や類上皮腫などでは, 第8脳神経の病変はANに比べると軽度である. つまり, 小脳橋角部腫瘍では蝸牛神経への腫瘍浸潤や軸索の変性は軽度で, その難聴は蝸牛神経の伝導障害や蝸牛神経以外の障害で説明しなければならない.
ISSN:0030-6622
DOI:10.3950/jibiinkoka.96.24