早期診断により多臓器不全から救命し得た劇症型抗リン脂質抗体症候群の1例
症例は50歳女性.急激に進行する意識障害,腎不全,肝機能障害,溶血性貧血,血小板減少,発熱のために2008年7月,当院に救急搬送された.病歴から血栓性血小板減少性紫斑病が疑われ,血漿交換を開始したが,入院後1週間以内に,血栓による腸管穿孔,脾梗塞を併発し,さらに,フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)が陽性であったことから,劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)と考えられた.他の抗リン脂質抗体は,ループスアンチコアグラント(LA)が経過中1度だけ陽性となった.基礎疾患は,病歴・検査所見から全身性エリテマトーデス(SLE)が疑われた.CAPSは,過半数例で死の転帰をとる...
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Veröffentlicht in: | 日本臨床免疫学会会誌 2010, Vol.33(1), pp.24-30 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 症例は50歳女性.急激に進行する意識障害,腎不全,肝機能障害,溶血性貧血,血小板減少,発熱のために2008年7月,当院に救急搬送された.病歴から血栓性血小板減少性紫斑病が疑われ,血漿交換を開始したが,入院後1週間以内に,血栓による腸管穿孔,脾梗塞を併発し,さらに,フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)が陽性であったことから,劇症型抗リン脂質抗体症候群(CAPS)と考えられた.他の抗リン脂質抗体は,ループスアンチコアグラント(LA)が経過中1度だけ陽性となった.基礎疾患は,病歴・検査所見から全身性エリテマトーデス(SLE)が疑われた.CAPSは,過半数例で死の転帰をとるが,腸管穿孔に対しては,腸切除などの外科的処置を施行し,また,高容量のステロイド療法とヘパリンやワーファリンによる抗凝固療法を血漿交換に併用し,救命に成功した.CAPSは,短期間で全身の微小血管に血栓をきたす予後不良な疾患であり,現在の診断基準にはaPS/PTが含まれていないものの,aPS/PTはLAの存在や血栓症と強い相関がある.本例は診断に難渋したものの,臨床経過,組織学的な血栓の証明,抗リン脂質抗体の存在から,早期に治療介入でき,また,aPS/PT抗体価が病勢を反映して低下した.貴重な症例と考えここに報告する. |
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ISSN: | 0911-4300 1349-7413 |
DOI: | 10.2177/jsci.33.24 |