中枢性トレランスと自己免疫疾患

中枢性トレランスは胸腺における幼若T細胞のレパトア選択によって形成され,自己の抗原に反応する免疫応答を防いでいる.幼若T細胞は,そのTCRの抗原特異性によって成熟(正の選択)か死(負の選択)という全く異なる運命を辿るが,それらの過程は別個の細胞内シグナル伝達経路によって制御されている.特に,TCR複合体に会合するZAP-70の機能異常,あるいは負の選択を制御するアポトーシス誘導因子Bimの欠損は,自己トレランスの破綻と自己免疫疾患をもたらす.さらに,レパトア選択の過程から分化するCD25+CD4+制御性T細胞は末梢における自己トレランスの維持に重要であり,その分化には転写因子Foxp3が必要で...

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Veröffentlicht in:日本臨床免疫学会会誌 2006, Vol.29(1), pp.8-15
Hauptverfasser: 新田, 剛, 高浜, 洋介
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:中枢性トレランスは胸腺における幼若T細胞のレパトア選択によって形成され,自己の抗原に反応する免疫応答を防いでいる.幼若T細胞は,そのTCRの抗原特異性によって成熟(正の選択)か死(負の選択)という全く異なる運命を辿るが,それらの過程は別個の細胞内シグナル伝達経路によって制御されている.特に,TCR複合体に会合するZAP-70の機能異常,あるいは負の選択を制御するアポトーシス誘導因子Bimの欠損は,自己トレランスの破綻と自己免疫疾患をもたらす.さらに,レパトア選択の過程から分化するCD25+CD4+制御性T細胞は末梢における自己トレランスの維持に重要であり,その分化には転写因子Foxp3が必要である.一方,中枢性トレランスの確立には,幼若T細胞を取り巻く胸腺微小環境が必要である.胸腺髄質の形成に必要なNF-κB活性化経路,髄質上皮細胞での組織特異的抗原の発現を制御する因子AIRE,幼若T細胞の皮質から髄質への移動に関わるCCR7シグナル等が明らかにされており,これらの分子の機能異常はいずれも自己免疫疾患をもたらす.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.29.8