徳之島と奄美大島に生息するコウモリ類の生態学的研究,特にリュウキュウテングコウモリMurina ryukyuanaについて

徳之島と奄美大島のコウモリ類について,カスミ網,ハープトラップおよびアカメガシワトラップによる捕獲,洞窟探査,音声録音や発信機装着個体の追跡によって調査し,以下の7種と未同定の種が確認された.(1)リュウキュウテングコウモリMurina ryukyuanaは両島の常緑広葉樹林に生息しているが,体のサイズは徳之島の方が大きかった.本種は日毎にねぐらを変え,発信機装着個体の追跡からねぐら間の移動距離は25~178 mであった.ねぐら場所として,比較的乾燥した枯葉,群葉および樹洞が利用されていた.出産・哺育期は5月~7月,母子集団は11月まで持続し母子最大16頭であった.独立後は幼獣雌雄ともに単独生...

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Veröffentlicht in:哺乳類科学 2019, Vol.59(1), pp.15-36
Hauptverfasser: 船越, 公威, 山下, 啓, 北之口, 卓志, 田中, 広音, 大坪, 将平, 大平, 理紗, 内原, 愛美, 大澤, 達也, 渡辺, 弘太, 永山, 翼, 亘, 悠哉, 南, 尚志
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Zusammenfassung:徳之島と奄美大島のコウモリ類について,カスミ網,ハープトラップおよびアカメガシワトラップによる捕獲,洞窟探査,音声録音や発信機装着個体の追跡によって調査し,以下の7種と未同定の種が確認された.(1)リュウキュウテングコウモリMurina ryukyuanaは両島の常緑広葉樹林に生息しているが,体のサイズは徳之島の方が大きかった.本種は日毎にねぐらを変え,発信機装着個体の追跡からねぐら間の移動距離は25~178 mであった.ねぐら場所として,比較的乾燥した枯葉,群葉および樹洞が利用されていた.出産・哺育期は5月~7月,母子集団は11月まで持続し母子最大16頭であった.独立後は幼獣雌雄ともに単独生活に入った.成獣雄は秋季になわばりを持つことが示唆された.(2)ヤンバルホオヒゲコウモリMyotis yanbarensisは両島の限られた常緑広葉樹林に生息しているが,徳之島における捕獲率は非常に低く個体数が非常に少ないことが示唆された.(3)オリイコキクガシラコウモリRhinolophus cornutus oriiは両島に点在する自然洞や廃坑をねぐらとして利用していた.この種の音声について徳之島のピーク周波数(111.3 kHz)は奄美大島(107.7 kHz)より高かった.(4)リュウキュウユビナガコウモリMiniopterus fuscusの飛翔域は各島内の広範囲に及んでいた.(5)モモジロコウモリMyotis macrodactylusは河川域で飛翔していたが,両島ではきわめて少なかった.(6)アブラコウモリPipistrellus abramusは両島の市街地に生息することが再確認された.(7)クビワオオコウモリPteropus dasymallusは徳之島で発見された.(8)Tadarida sp.の生息が両島で確認され,徳之島では初めての確認であった.この種の採餌空間は各島内の広域に及んでおり,奄美大島の海岸2ヵ所でねぐら場所が確認された.音声解析から,徳之島では既知種とは異なる種が少なくとも2種,奄美大島では既知種と異なる種が少なくとも2種生息している可能性が示唆された.
ISSN:0385-437X
1881-526X
DOI:10.11238/mammalianscience.59.15