Necrotizing sialometaplasia様所見を呈した食道病変の1例

「和文要旨」54歳男性. 健康診断で上部消化管内視鏡を施行して, 食道下部に隆起性病変を認めた. 生検で食道腺由来の腺腫が疑われたが診断確定に至らず, 診断的治療を目的に内視鏡的粘膜切除術を施行した. 診断に難渋したがnecrotizing sialometaplasiaに類似した化生性病変と診断した. 同病変が気管支腺に発生したという報告はあるが, 食道に発生した報告例はなく, 非常に稀な症例と考えられた. 「はじめに」食道には上皮性良悪性腫瘍, 粘膜下腫瘍がしばしばみられるが, 稀ながら付属器腺由来の病変もみられる. 唾液腺に発生するnecrotizing sialometaplasia類似の食道病変を経験したので報告する. 「症例」患者：52歳, 男性. 主訴：なし. 既往歴・家族歴：特記事項なし. 現病歴：2006年6月に健診で上部消化管内視鏡を施行したところ, 下部食道に5mm大の円形の扁平隆起を認めた. 生検で, 食道固有腺由来の腺腫が疑われたが診断は確定できず, 9月14日に診断的治療を目的に入院した. 入院時現症・検査所見：特記すべき所見なし. 上部消化管内視鏡・超音波内視鏡(EUS)：健診時(6月16日)の上部消化管内視鏡では下部食道に辺縁が白色に肥厚した, 内部は赤褐色で中央に陥凹を有する5mm大の円形の扁平隆起を認めた(Color 1). EUS時(7月3日)の内視鏡像は生検の影響か初回内視鏡時より中央は発赤が強く, 陥凹も深くなっていた(Fig.1).