演題121 胆石症に対するmethyl tert-butyl etherによる直接溶解療法の経験

胆道結石症に対する非手術的療法の進歩は目覚ましい. その代表として, Sauerbruchが報告した体外衝撃波破砕療法(ESWL)と, Allenが報告したmethyl tert-butyl ether(MTBE)を用いた直接溶解療法が挙げられる. しかし本邦では, MTBEの結石溶解性に関しての幾つかのin vitroでの報告が見られるものの, 臨床応用例がなく, ESWLに比して極めて知見に乏しいのが現状である. そこで, 今回我々は, 動物実験にてMTBEの安全性を確認後, コレステロール胆石患者5例に対し, エコーガイド経皮経肝胆嚢ドレナージ術を施行して, MTBEによる胆嚢結石直接溶...

Ausführliche Beschreibung

Gespeichert in:
Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:胆道 1990, Vol.4 (3), p.365-365
Hauptverfasser: 峠誠司, 田妻進, 佐川広, 初鹿寿美恵, 山下郡司, 相原直樹, 佐々木晴敏, 水野重樹, 伊藤正樹, 堀内至, 梶山梧朗
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
Tags: Tag hinzufügen
Keine Tags, Fügen Sie den ersten Tag hinzu!
Beschreibung
Zusammenfassung:胆道結石症に対する非手術的療法の進歩は目覚ましい. その代表として, Sauerbruchが報告した体外衝撃波破砕療法(ESWL)と, Allenが報告したmethyl tert-butyl ether(MTBE)を用いた直接溶解療法が挙げられる. しかし本邦では, MTBEの結石溶解性に関しての幾つかのin vitroでの報告が見られるものの, 臨床応用例がなく, ESWLに比して極めて知見に乏しいのが現状である. そこで, 今回我々は, 動物実験にてMTBEの安全性を確認後, コレステロール胆石患者5例に対し, エコーガイド経皮経肝胆嚢ドレナージ術を施行して, MTBEによる胆嚢結石直接溶解療法を試み, 1年以上の長期経過観察をしえたので報告する. 対象:レントゲンおよび腹部エコー画像診断にて, コレステロール胆石症と診断された5例(男性2例, 女性3例)に対し, 本療法を施行した. 内訳は孤立性陰性石2例, 多発性陰性石1例, 孤立性陽性石1例, 嵌頓結石1例であった. 方法:原則的にAllenらの方法に従った. 即ち, エコーガイドにて経皮経肝胆嚢ドレナージ術を施行した. 翌日以降, 造影剤にて胆嚢内に存在する結石の侵漬に必要な最少用量を概ね確認した後, 濾過滅菌された同量のMTBEを注入し, 5分毎に吸引注入を繰り返した. 総計12時間を目安として, 本療法を施行し, 効果を判定した. 1回の治療時間は3時間とした. 溶解後は胆汁酸製剤を服用させ, 腹部エコーにて経過観察した. 結果:完全溶解を認めたものは4例で, 治療時間総計は3~12時間であった. 内, 嵌頓結石例には経胆道ファイバー電気水圧破砕術を併用した. 溶解しえなかった1例は3.5cm径の孤立性陽性石で, その後ESWLも試みたが破砕されず, 最終的に手術された. その結果, 3.5cm径の混合石であった. しかし, 胆嚢粘膜には軽度の炎症所見が認められたのみで, MTBEおよびESWLの組織障害性は比較的低いものと思われた. 溶解後, 腹部エコーによる経過観察では1年間再発を認めず, 胆嚢造影にて胆嚢機能が確認された. また, 全例において, 術中エーテル臭の自覚と腹部不快感を認めたが, 無処置にてことなきをえた. 結論および考察:1. MTBEによる胆石直接溶解療法は石灰化を伴わないコレステロール胆石に対して, 極めて有効であった. 2. MTBEによる胆嚢組織障害性は比較的低いものと思われた. 3. MTBEは将来的にESWL後の消失遅延例などに対する補助的治療法となりうるものと思われた.
ISSN:0914-0077