演題27 胆嚢癌と鑑別困難なbiliary sludgeの1例―胆嚢癌と腫瘤様biliary sludgeの鑑別診断

はじめに:画像診断の進歩にもかかわらず胆嚢癌の診断にはなお時として困難を感ずる場合があり, 腫瘤様biliary sludgeはそのような病態のひとつである. 最近経験した腫瘤様biliary sludge症例で, 胆嚢癌との鑑別に関して興味ある知見を得たので報告する. 症例:76歳, 男. 主訴:なし. 既往歴:71歳時, 心筋梗塞で4ヵ月入院. 現病歴:陳旧性心筋梗塞で外来経過観察中, 腹部超音波検査(以下, USと略)で胆嚢癌を疑われた. 入院時検査所見:CA19-9の軽度上昇54U/ml以外, 血液・尿一般検査では異常所見を認めなかった. US所見:頸部胆嚢内は7-10mm大のstro...

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Veröffentlicht in:胆道 1990, Vol.4 (3), p.318-318
Hauptverfasser: 尾関豊, 雑賀俊夫, 松原長樹, 佐久間正幸, 福地貴彦, 石田秀樹, 本間光雄, 小山明宏, 北村隆
Format: Artikel
Sprache:jpn
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Beschreibung
Zusammenfassung:はじめに:画像診断の進歩にもかかわらず胆嚢癌の診断にはなお時として困難を感ずる場合があり, 腫瘤様biliary sludgeはそのような病態のひとつである. 最近経験した腫瘤様biliary sludge症例で, 胆嚢癌との鑑別に関して興味ある知見を得たので報告する. 症例:76歳, 男. 主訴:なし. 既往歴:71歳時, 心筋梗塞で4ヵ月入院. 現病歴:陳旧性心筋梗塞で外来経過観察中, 腹部超音波検査(以下, USと略)で胆嚢癌を疑われた. 入院時検査所見:CA19-9の軽度上昇54U/ml以外, 血液・尿一般検査では異常所見を認めなかった. US所見:頸部胆嚢内は7-10mm大のstrong echoおよびacoustic shadowを認めm 底部には3.2×2.2cm大の不整形な腫瘤様エコーを認めた. 腫瘤様エコーの内部は不均一で, 小円形の低エコー域を認めた. 体位変換や, 振動にても形状に変化を示さなかった. CT所見:胆嚢は頸部に石灰化陰影を底部に軽度の高吸収域を認めた. ERCP所見:胆嚢は砂時計状を呈していた. 頸部側には2ないし3個の移動性のある7-10mm大の透亮像を認め, 底部側には13mm大の類円形の透亮像とその周囲に約3cm大の淡い不均一な透亮像を認めた. 血管造影所見:胆嚢動脈は著明に拡張し, その末梢分枝には微細な血管増生を認めた. 肝動脈の前下および後下区域枝との間に吻合を認め, 毛細管相では胆嚢床にほぼ一致して軽度の濃染像を認めた. 以上より, 胆石症と胆嚢癌あるいは腫瘤様biliary sludgeの診断で手術を施行した. 手術所見:胆嚢摘出術を施行し, 腹腔側で胆嚢を切開したところ, 胆嚢底部に黒褐色調の塊状の胆泥を認めた. その他に7-10mm大の胆石を2個認めたが, 粘膜面には腫瘍性病変を認めなかった. 以上の所見から胆石症と腫瘤様biliary sludgeと診断した. 術後経過は良好で, 第19病日に退院した. 考察:胆嚢biliary sludgeはUSにより容易に検出可能だが, 腫瘤を形成し体位変換で移動性のないものは胆嚢癌との鑑別が困難である. しかし, 本例では腫瘤様エコー内に小円形の低エコー域を認め, biliary sludge内のより液状な成分を反映しているものと推察された. 単純CTでは軽度の高吸収域として描出され腫瘍性病変は否定的であり, 血管造影では胆嚢床に一致した濃染像を認め, USでの腫瘤様エコーの大きさ, 位置と解離していることが特徴的であった.
ISSN:0914-0077