演題26 短期間に急速に変化, 増大した胆嚢コレステロールポリープの1例

超音波検査(以下US)の普及により多数の胆嚢小隆起性病変が発見されるようになり, その手術適応が問題となる場合がある. 胆嚢小隆起性病変のなかで最も頻度の高いコレステロールポリープは, US画像上点状高エコーの集合よりなる桑実状の腫瘤として描出される場合が多く, 診断は比較的容易であるが, なかには非典型的な画像を呈し診断困難な症例もある. 今回我々は, 約10ヶ月間にUS画像上腫瘤径が約40%増大し, 典型的なコレステロールポリープ像から非典型的な像へと変化したため, 胆嚢癌の可能性も否定できず手術を施行した症例を経験したので, 臨床病理学的検討を加えて報告する. 症例は39才男性, 主訴は...

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Veröffentlicht in:胆道 1990, Vol.4 (3), p.317-317
Hauptverfasser: 鵜飼克行, 秋田幸彦, 水野伸一, 太田淳, 小川明男, 大島章, 京兼隆典, 七野滋彦, 佐藤太一郎, 二村雄次, 近藤哲, 深田伸二
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:超音波検査(以下US)の普及により多数の胆嚢小隆起性病変が発見されるようになり, その手術適応が問題となる場合がある. 胆嚢小隆起性病変のなかで最も頻度の高いコレステロールポリープは, US画像上点状高エコーの集合よりなる桑実状の腫瘤として描出される場合が多く, 診断は比較的容易であるが, なかには非典型的な画像を呈し診断困難な症例もある. 今回我々は, 約10ヶ月間にUS画像上腫瘤径が約40%増大し, 典型的なコレステロールポリープ像から非典型的な像へと変化したため, 胆嚢癌の可能性も否定できず手術を施行した症例を経験したので, 臨床病理学的検討を加えて報告する. 症例は39才男性, 主訴は特になし, 1988年11月18日健診にて胆嚢の隆起性病変を指摘され, 精査のため来院した. USでは, high echoicな点状エコーの密集した9×6mmの腫瘤が胆嚢体部肝床側にあり, コレステロールポリープと診断した. 約半年後の1989年6月2日経過観察のため施行したUSにて, ポリープは10×8mmとやや増大し, 辺縁もやや不整となりエコーレベルも胆嚢壁と同程度となっていた. 約3ヶ月後の9月22日のUSでは, 12×10mmとさらに増大を認め, 辺縁の不整は著明となり, low echoicな内部エコーを持つ腫瘤として描出された. ダイナミックCTでは腫瘤は描出できなかった. ERCPでは辺縁不整の隆起性病変として描出された. 超音波内視鏡では全体にlow echoicで内部にさらにlow echoicな部を持った, 数mmの大顆粒から成り立つ腫瘤として描出された. 以上からadenomaが最も強く疑われたが, 悪性の可能性も否定できず, 11月6日胆嚢摘出術を施行した. 腫瘤は極めて細い茎を持つ13×13×5mmの黒色のポリープで粗大結節状を呈していた. 病理所見はコレステロールポリープであったが, 腺増生が著明で, その腺腔は黒褐色の液体で嚢胞状に拡張していた. この拡張した腺腔が多数集合していたため, コレステロールポリープでありながら, 全体としては黒色を呈したと思われた. 腫瘤径が短期間に急速に増大し, US画像上も内部にlow echoicな部を持つ非典型的な像として描出されたのもこのためと考えられた. 本症例で施行した画像診断と病理所見を比較してみると, 超音波内視鏡が最もその特徴をよく描出できていた. しかしそれでもなお確診には到らず, 手術を施行せざるをえず, 現在の質的診断法の限界であると思われた.
ISSN:0914-0077