演題4 無石胆嚢癌の検討ならびに無石腺扁平上皮癌の経験例について
胆嚢腺扁平上皮癌は胆石合併例が多く, 無石例は比較的稀であり, 胆嚢癌と胆石の関連を考える上で重要である. われわれは剖検にて無石胆嚢腺扁平上皮癌と確診し得た症例を経験し, さらに剖検例における無石胆嚢癌について検討したので報告する. 症例は74歳, 男性. 高血圧症, 高尿酸血症にて当科外来通院中, 平成元年8月, 腹部膨満感, 便秘および右季肋部痛を主訴に入院. 入院時, 胆道系酵素の上昇およびCEA3.8ng/ml, CA19-9 1300U/mlと腫瘍マーカーの上昇を認め, 腹部超音波検査および腹部CTでは胆石は認められなかったが, 胆嚢内腔の狭小化, 胆嚢壁の肥厚およびそれに連続した...
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Veröffentlicht in: | 胆道 1990, Vol.4 (3), p.306-306 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 胆嚢腺扁平上皮癌は胆石合併例が多く, 無石例は比較的稀であり, 胆嚢癌と胆石の関連を考える上で重要である. われわれは剖検にて無石胆嚢腺扁平上皮癌と確診し得た症例を経験し, さらに剖検例における無石胆嚢癌について検討したので報告する. 症例は74歳, 男性. 高血圧症, 高尿酸血症にて当科外来通院中, 平成元年8月, 腹部膨満感, 便秘および右季肋部痛を主訴に入院. 入院時, 胆道系酵素の上昇およびCEA3.8ng/ml, CA19-9 1300U/mlと腫瘍マーカーの上昇を認め, 腹部超音波検査および腹部CTでは胆石は認められなかったが, 胆嚢内腔の狭小化, 胆嚢壁の肥厚およびそれに連続した肝内SOLを認めた. その後, 血性腹水が出現し, 腹水細胞診で腺癌細胞を検出. 胆嚢癌, 癌性腹膜炎および腸閉塞の診断にて保存的治療を行っていたが, 9月21日死亡. 剖検にて胆嚢内に, 胆石は認められなかったが, 100mm×70mm×35mm大の腺扁平上皮癌を認め, 肝右葉, 右横隔膜への直接浸潤および腹膜, 左肺下葉, 膵頭部周囲リンパ節への転移が認められた. 本症例は, 3ヵ月前までの生化学検査, 腫瘍マーカーは正常であったが, その後徐々に胆道系酵素の上昇が認められ, 死亡したものである. 胆嚢腺扁平上皮癌は全胆嚢癌中の約5%に認められ, 本症例のように腫瘤形成性で隣接臓器への直接浸潤や遠隔転移を起こしやすいとされている. また無石例の報告は少なく, 胆石と胆嚢癌との因果関係を考える上で興味深い疾患である. 1949年から1986年までの剖検例23,326例中の胆嚢癌253例(1.1%)を検討した結果, 全剖検例に対する有石胆嚢癌頻度および無石胆嚢癌頻度は両者ともに同程度に上昇していたが, 有胆石2,230例の胆嚢癌頻度は6.2%で, 年代的変化はほとんど認められなかった. 一方, 無胆石21,096例の胆嚢癌頻度は0.5%と低率であったが, 年代的変化をみると, 1949年~1953年では0.2%であったのに対して, 1984~1986年では1.1%と増加していた. 胆石と胆嚢癌の因果関係について様々な論議がなされているが, 今回の検討では無石胆嚢癌が増加傾向にあり, 胆嚢癌発生の原因として胆石以外の因子も重視する必要がある. |
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ISSN: | 0914-0077 |