パネル2-9) 経過観察からみた高齢者胆石症の治療方針

高齢者胆石は併存疾患による手術のリスクを念頭に保存的に取扱われるが, 逆に, 一旦発症すると激烈な経過をとるため, 積極的予防的手術が必要との考えもある. 今回われわれは, 胆石保有高齢者の死亡までの自然史を分析してこれらの問題点を明らかにしたい. 対象は1961年から1989年までの名古屋市厚生院剖検1829例のうち剖検時に胆石が存在した症例で, 胆嚢結石294例, 胆嚢胆管結石35例, 胆管結石35例の計364例(全剖検例の19.9%)である. 胆嚢結石329例中, 胆管結石の併存率は10.6%であり, 加齢と共に増加していた. 大部分の胆嚢結石は入所時に胆嚢造影やUS, CTで存在診断が...

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Bibliographische Detailangaben
Veröffentlicht in:胆道 1990, Vol.4 (3), p.277-277
Hauptverfasser: 片桐健二, 隈井知之
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:高齢者胆石は併存疾患による手術のリスクを念頭に保存的に取扱われるが, 逆に, 一旦発症すると激烈な経過をとるため, 積極的予防的手術が必要との考えもある. 今回われわれは, 胆石保有高齢者の死亡までの自然史を分析してこれらの問題点を明らかにしたい. 対象は1961年から1989年までの名古屋市厚生院剖検1829例のうち剖検時に胆石が存在した症例で, 胆嚢結石294例, 胆嚢胆管結石35例, 胆管結石35例の計364例(全剖検例の19.9%)である. 胆嚢結石329例中, 胆管結石の併存率は10.6%であり, 加齢と共に増加していた. 大部分の胆嚢結石は入所時に胆嚢造影やUS, CTで存在診断がなされ定期的に経過観察されている. ちなみに, 入所者年齢は年々高齢化しているが, 平均77.1才, 滞在平均月数は1980年までは約1年, 最近は約半年である. 殆どが死亡退所で, 剖検率は80%にのぼる. 364例の死因は, 肺炎を中心とした呼吸器系良性疾患が111例(30.5%)ともっとも多く, 続いて循環器系疾患など胆石以外の原因であった. 当院で胆嚢摘出術を行ったものは14例(0.3%)で, 胆石胆嚢炎7例, 胆管結石の存在による予防的手術5例, 急性腹症による緊急手術1例, 胃癌切除時摘除1例であった. 胆石症が死因に関与したと思われる症例は11例(男性3例, 女性8例, 平均年齢83才)で, 10例は胆管に結石が存在し, その多くが突然の急激な胆道感染で致死的経過をとっていたが, 病歴を詳細に検討すると, 1年内外に前徴と思われる腹部症状を示していることが多い. 剖検時に胆管結石が存在する例で全く無症状で経過した症例も多いが, 胆嚢結石294例のうち7例(0.24%)の有症状化に比し, 胆管結石のそれは明らかに高率で致死率も高い. しかし, 最近はUS, CTの導入と積極的なERCP適用ににより, 早期にこれらの病態が診断可能になったこと, 経皮的あるいは内視鏡的治療法と手術成績の向上により, 1983年3月以降, 胆石症での死亡例はない. 胆嚢癌は胆石例中14例, 1443例の無結石例中13例の計25例に存在したが, 死因となったものは15例であった. 考案:高齢者の胆嚢結石が死因に関与する確率は低く, 発症後に病状にあわせて治療を行なえば良いと考えられるが, 胆管結石は高率に有症状化し重篤な胆管炎を引き起こし, しばしば致死的であるため, 胆嚢結石症例には必ず胆管結石の検索を必ず行い, 無症状例においても, 時期をみて外科的, もしくは内科的に結石の除去を行うか, 常に急激な発症に対処できる体制で, 臨床症状の注意深い経過観察を行う必要がある.
ISSN:0914-0077