演題112 胆嚢胆汁の胆汁酸分析結果からみた急性無石胆嚢炎の背景因子について
〔目的〕急性無石胆嚢炎の原因には多くの因子の関与が指摘され, その一つとして遊離型二次胆汁酸の影響も考えられてきたが臨床例で検討した報告は少ない. これらの観点から胆嚢内の胆汁酸の分析を中心に, 急性無石胆嚢炎の背景因子について検討を行った. 〔対象・方法〕経皮経肝胆嚢外瘻術(以下PTCCD)で胆嚢胆汁を採取した急性無石胆嚢炎10症例(男性:7, 女性:3例, 平均71.9歳)と, 胆道疾患, 長期間の絶食, 高カロリー輸液などのない胃癌患者で, 術中胆嚢胆汁を採取した9症例(男性:4, 女性5例, 平均58.7歳)を胆汁酸組成を中心に比較検討した. 胆汁酸の分析は高速液体クロマトグラフィーで...
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Veröffentlicht in: | 胆道 1989, Vol.3 (3), p.349-349 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 〔目的〕急性無石胆嚢炎の原因には多くの因子の関与が指摘され, その一つとして遊離型二次胆汁酸の影響も考えられてきたが臨床例で検討した報告は少ない. これらの観点から胆嚢内の胆汁酸の分析を中心に, 急性無石胆嚢炎の背景因子について検討を行った. 〔対象・方法〕経皮経肝胆嚢外瘻術(以下PTCCD)で胆嚢胆汁を採取した急性無石胆嚢炎10症例(男性:7, 女性:3例, 平均71.9歳)と, 胆道疾患, 長期間の絶食, 高カロリー輸液などのない胃癌患者で, 術中胆嚢胆汁を採取した9症例(男性:4, 女性5例, 平均58.7歳)を胆汁酸組成を中心に比較検討した. 胆汁酸の分析は高速液体クロマトグラフィーで行った. 〔結果〕急性無石胆嚢炎10症例中8例が70歳以上で, うち80歳以上の高齢者が3例あった. 他の2例は各々41, 64歳でいずれも膠原病でステロイド剤を投与中に発症した. これらの中にはDIC, 敗血症などとほぼ同時に発症した例や, 食道癌術後第10病日での発症, 大動脈弁置換術後の入院期間中での発症, 肝硬変合併例などが含まれていた. このように高齢や全身状態の低下が本症の背景要因にあるとする従来の報告と一致する傾向が認められた. PTCCD施行時胆汁の細菌培養を行った9例中, 培養陰性例が6例, E.coli陽性例が2例他の1例はK.pneumoniaeとCl.perfringensが陽性であった. この症例は胆汁が泥状で, 胆汁酸は検出されず他の9例の総胆汁酸濃度は5.84~203μmol/ml, 遊離型胆汁酸は3例で0.016~0.84μmol/ml検出された. 胃癌症例は各々136.7±75.3, 0.155±0.273μmol/mlであった. 胆嚢炎例では遊離型デオキシコール酸は2例で検出されたが遊離型リトコール酸は検出されなかった. 一方胃癌症例では全例細菌培養は陰性で, これら2種の遊離型胆汁酸も検出されなかった. また二次/一次胆汁酸比は胆嚢炎例が0.275~0.390で胃癌症例の0.373±0.459に比し二次胆汁酸の増加はなかった. 胆汁酸抱合率は胃癌症例で99.9±0.1%であったが, 胆嚢炎症例には100%のものが6例あり, また同時に2例で行った血液中の胆汁酸分析では遊離型胆汁酸が検出されたことから, 胆嚢が腸肝循環と隔絶された環境にある可能性が示唆された. 一方PTCCD施行時に4例で胆嚢造影を行ったが, いずれも総胆管との交通が認められなかった. 〔結語〕(1)急性無石胆嚢炎の発症過程には高齢や全身状態の低下といった背景因子と, 胆嚢内に胆汁がうっ滞する病態とが関連していることが示唆された. (2)細菌感染や遊離型二次胆汁酸の存在は急性無石胆嚢炎の直接の原因ではなく, 二次的な変化と考えられた. |
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ISSN: | 0914-0077 |