演題99 左膿胸を併発した肝内結石症の1治験例
肝内結石症を伴う肝膿瘍が, 胸腔に穿破して膿胸を併発したと考えられる胆道感染症としては比較的稀な病態を示した症例を経験したので報告する. 症例:63歳, 女性. 主訴:左側胸部痛及び発熱. 既往歴:昭和60年1月より昭和62年7月まで計6回にわたり左肺炎で入退院をくり返していたが, いずれも抗生剤投与により寛解していた. 黄疸の既往はない. 現病歴:昭和63年10月17日左側胸部痛及び発熱(38.2℃)が出現し10月19日本院内科受診し入院した. 現症:身長155cm, 体重48kg, 栄養中等度, 血圧90/50mmHg, 脈拍72整, 眼険結膜に軽度貧血を認め黄疸はなく, 胸部理学的所見と...
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Veröffentlicht in: | 胆道 1989, Vol.3 (3), p.343-343 |
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Format: | Artikel |
Sprache: | jpn |
Online-Zugang: | Volltext |
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Zusammenfassung: | 肝内結石症を伴う肝膿瘍が, 胸腔に穿破して膿胸を併発したと考えられる胆道感染症としては比較的稀な病態を示した症例を経験したので報告する. 症例:63歳, 女性. 主訴:左側胸部痛及び発熱. 既往歴:昭和60年1月より昭和62年7月まで計6回にわたり左肺炎で入退院をくり返していたが, いずれも抗生剤投与により寛解していた. 黄疸の既往はない. 現病歴:昭和63年10月17日左側胸部痛及び発熱(38.2℃)が出現し10月19日本院内科受診し入院した. 現症:身長155cm, 体重48kg, 栄養中等度, 血圧90/50mmHg, 脈拍72整, 眼険結膜に軽度貧血を認め黄疸はなく, 胸部理学的所見として呼吸音は左下肺野で減弱し, 軽度の湿性ラ音を認めた. 腹部所見に異常はなかった. 入院時検査成績:WBC15,400(stab24%), CRP25mg/dlと著明な高値を示した. 肝胆道系酵素は正常範囲内であった. 胸部単純X-P及び胸部CT所見は左胸腔の胸水貯留を示しているが他の所見を考慮して左膿胸と診断した. 10月28日経皮的胸腔ドレナージを施行すると糞臭を伴った膿が大量流出した. 抗生物質の全身投与及び胸腔内洗浄を施行したところ膿胸は治癒し臨床所見も改善した. 胸部CT像の左横隔膜スライスで横隔膜の変形と肝内胆管の拡張が疑われたので12月8日腹部USTGを行ったところ, 肝外側区域肝内胆管の拡張と結石を認め更に腹部CTでは胆管の横隔膜への穿破と思われる所見を認めた. ERCPではBIIの拡張及びBIIIの完全閉塞及びBII内に結石を認めた. 以上より肝内結石を伴う胆管炎から肝膿瘍をきたし横隔膜への穿破によって左膿胸を併発したものと診断した. ERCPで造影されない閉塞胆管の情報を得るために行ったPTCでは穿刺液は白濁色で培養で大腸菌を検出した. DIC-CTでは外側区域の機能不全を認め腹部Angioで左下横隔膜動脈に血管増生を認めた. 以上より肝切除の適応と考え2月7日外側区域切除を行った. 外側区域は横隔膜に癒着していたが, 腹腔内膿瘍はなかった. 切除標本のSIIIは萎縮し, BII及びBIIIに結石を認め胆嚢にも微量結石を認めた. 前者はコレステロール結石, 後者は混合結石であった. 患者は術後21日目に退院し, 結石・膿胸の再発はない. 肝内結石の胆道感染によって膿胸を併発した症例を報告した. この様な症例に対しては, 截石術のみでは不充分で, 感染源となる肝区域の切除は, 適応と考える. |
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ISSN: | 0914-0077 |