演題165 胆汁性腹膜炎を呈した肝内結石症の1例

肝内胆管穿孔の報告は1926年のSmith以来散見されるが, 本邦での報告は数例のみで肝内結石が原因となった報告例は2例のみであった. 今回我々は肝破裂にて胆汁性腹膜炎を呈し腹膜炎手術後2期的に肝切除を施行し治癒しえた症例を経験したので報告する. {症例} 68才女性, 5年前に他医にて胆嚢摘出術を行なっている. 上腹部痛を来し近医入院するも症状が増悪したため当院に転院となった. 腹部全体に圧痛を認め, 白血球16600, 黄だんはなく, 腹部単純XPでは腹腔内遊離ガス像を認めなかった. 急性腹膜炎と診断し呼吸不全を合併していたため硬膜外麻酔にて緊急開腹した. 開腹時所見では, 腹腔内には薄い...

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Veröffentlicht in:胆道 1988, Vol.2 (3), p.408-408
Hauptverfasser: 成瀬勝, 柏木孝仁, 水崎馨, 秋田治之, 柳沢暁, 中本実, 高橋恒夫, 足利健, 曽爾一顕, 長尾房大, 羽野寛
Format: Artikel
Sprache:jpn
Online-Zugang:Volltext
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Beschreibung
Zusammenfassung:肝内胆管穿孔の報告は1926年のSmith以来散見されるが, 本邦での報告は数例のみで肝内結石が原因となった報告例は2例のみであった. 今回我々は肝破裂にて胆汁性腹膜炎を呈し腹膜炎手術後2期的に肝切除を施行し治癒しえた症例を経験したので報告する. {症例} 68才女性, 5年前に他医にて胆嚢摘出術を行なっている. 上腹部痛を来し近医入院するも症状が増悪したため当院に転院となった. 腹部全体に圧痛を認め, 白血球16600, 黄だんはなく, 腹部単純XPでは腹腔内遊離ガス像を認めなかった. 急性腹膜炎と診断し呼吸不全を合併していたため硬膜外麻酔にて緊急開腹した. 開腹時所見では, 腹腔内には薄い胆汁を混じた腹水が貯留し, その中に黒色の胆砂を認めた. 総胆管は2cm程に拡張が見られ, 肝内外胆管に結石は触知せず, また消化管には触視診上異常を認めなかった. 穿孔部位不明のまま大量の温生食にて腹腔内洗浄後, 左右横隔膜下, Winslow孔およびダグラス窩にドレーンを挿入し閉腹した. 術後2日目より3日間左横隔膜下ドレーンより胆砂と胆汁の排出をみた. なお採取した胆汁培養ではKlebsiellaが多数検出された. 2週後に行なったCTおよびERCPにて肝左葉の結石と拡張胆管および肝左葉の萎縮が判明し外側区域切除+総胆管切開Tドレナージを施行した. 拡張した左肝管内にはビ系石が充満し組織学的所見では, 胆管壁は著しく線維性に肥厚しており周囲肝実質は, 圧迫壊死に陥っていた. このため肝細胞脱落の著しい部位では胆管が露出し穿孔部胆管壁が変性壊死を呈していた. 今回我々は稀な臨床経過を辿った肝内結石症の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
ISSN:0914-0077